研究実績の概要 |
平均値の抽出をはじめとする要約統計量表象の存在が広く提唱される一方、その抽出過程は、選択的注意の限界容量内の情報利用によって説明されうることも指摘されている.本年度は、行動実験と理想的観察者モデルのシミュレーションとを用いて、円面積の平均量抽出における視覚情報処理特性を検討した. 1.視覚同時提示刺激の平均量抽出における情報処理特性の検討:一方を標準刺激、他方を比較刺激とする面積の異なる2群の円を継次提示し、どちらの円面積の平均量が大きいかの判断を課した.独立変数として、1)同時提示される円の数(2,4,9, 16の4種のセットサイズ)と、2)比較刺激の円面積の要約統計量を操作した.行動データと理想的観察者モデルのシミュレーション結果の比較から、刺激サイズ4以上の条件において、限界容量内の情報利用では説明不可能であることが示された. 2. 視覚同時提示刺激の分散抽出における情報処理特性の検討:上記と同じく円面積を用いて、分散抽出における視覚情報処理特性を検討した.一方を標準刺激、他方を比較刺激とする、面積の異なる2群の円を継次提示し、どちらの円面積の分散が大きいかの判断を課した.独立変数として、1)同時提示される円の数(2,4,9, 16の4種)と、2)比較刺激の円面積の分散を操作した.セットサイズが大きくなるに従い、僅かな分散識別精度の上昇が示された.行動データと理想的観察者モデルのシミュレーション結果の比較から、セットサイズが9及び16の際の識別精度は、限界容量内の情報利用では説明不可能であることが示された. 研究1、2の結果から、平均値、分散の抽出過程において、限界容量に依存しない包括的な刺激の処理を媒介とする要約統計量表象の存在が示唆された.
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