• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

要約統計量表象の認知過程とその発達的検討

研究課題

研究課題/領域番号 26380983
研究機関目白大学

研究代表者

時田 みどり  目白大学, 保健医療学部 作業療法学科, 教授 (40571112)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード要約統計量 / 平均値 / 確率分布 / 分散
研究実績の概要

基本的には研究計画にそって実験研究を進めた。昨年度の「今後の研究の推進方策」で明示したとおり、要約統計量として、「平均量」のみでなく「分散」も研究対象とした。
1. 分散識別課題における刺激群作成法の比較:刺激群の分散及び分布形を操作する分布統制法を提案し、各条件で観察者の成績がどのように異なるかを検討した。分布統制法では、取り出したN個の刺激セットが、取り出し前の確率分布に近似した分布を描くような刺激セットを作成した。さらに、識別閾の算出において利用されるQuest (Psychtoolbox 3)と恒常法における算出閾値を比較した。
2. 調整法を用いた異種視覚特性間の分散の比較:刺激属性や感覚モダリティに依存しないバラツキ認知メカニズムの存在が示唆されている。本研究では、視覚刺激における刺激属性間の分散識別可能性を検討することを目的として、調整法を用いて識別精度とバイアス傾向を測定した。刺激特性として、刺激面積と方位を用いた。条件としては、同一刺激属性内条件と刺激間条件を設定した。結果から、属性内、属性間刺激ともに、恒常法と同程度以上の識別精度が示された。
3. 平均値の抽出過程における刺激の分布形の効果:平均値の抽出過程における視覚情報処理について、異なる分布を設定してその効果を検討した。分布形として、Uniform, negatively skewed, positively skewed, Normal分布の4分布を設定した。それぞれの分布形条件について、平均値推定の精度とバイアスを測定した。 平均値推定において、全ての面積情報を一律に利用してそれらの平均量を抽出しているとしたら、分布形による差は見られないことが予測された。結果から、分布形による差が示され、特定の刺激がサンプリングされているか、或いは刺激によって重み付けが異なる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では、1)逐次提示刺激における要約統計量の抽出過程、2)聴覚刺激における要約統計量抽出過程の検討、3)異なる呈示刺激間での学習の転移まで、終了する予定であった。しかし、「研究実績の概要」に示した通り、研究の過程において当初の計画に含まれていなかった分散の表象及び分布形の効果について検討を行うこととなったため、計画と比較すると進捗に遅れが見られる。
計画との比較においては遅れているが、当初、要因として考えていなかった刺激の分散及び分布形について検討することは、要約統計量表象の過程の解明において重要な課題であると考えられる。今後も、これらの点について、詳細に検討していく計画である。同時に、当初の予定であった1)、2)、3)についても検討を進めていく。

今後の研究の推進方策

前年度に続き、要約統計量の抽出過程における刺激特性の分布形の効果について検討を行う。また、当初の研究計画にそって実験研究を進める。今年度は、本研究課題の最終年度であるので、これまでの実験結果を踏まえて、モデルの構築とその検証を進めることを目標とする。具体的な研究計画は以下の通りである。
1)視覚属性の要約統計量抽出過程における刺激の分散の効果:視覚属性(面積、方位、ランダムドットの運動方向)を用いて、刺激の分散を変化させ、分散の値と平均量抽出の精度と正確さとの関係と検討する。また、平均量推定と分散識別の課題を同時に行い、推定量の精度と分散識別精度の関係を明らかにする。
2)逐次呈示刺激における要約統計量の抽出過程:被験者は、逐次呈示された視覚刺激について、その平均量を推定し、推定した値が、次に呈示される比較刺激と比較して大きいか小さいかを判断する。結果から、丁度可知差異と主観的等価点を得る。視覚刺激属性として、大きさ、方位、輝度を用いる予定である。
3)聴覚刺激における要約統計量抽出過程の検討:聴覚刺激を逐次呈示し、その平均量及び分散の判別課題を課す。聴覚刺激の属性として、音圧、ピッチ、提示時間を用いる予定である。視覚刺激の場合と同様に、丁度可知差異と主観的等価点を得る。
4)2)、3)の結果を踏まえて、逐次呈示された視覚刺激の平均量抽出において、どのような情報処理が行われているかを検討する。また、各実験の前後に記憶課題を課し、記憶課題の成績と上記の結果との関連性を検討する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、以下の2点による。
1.聴覚刺激を用いた実験において、聴覚刺激提示用のアンプ(60,000円程度)を購入予定であったが、聴覚刺激使用の実験まで進まなかったため、購入を控えた。
2.執筆中の国際学術雑誌への投稿が遅れているため、その掲載料(280,000円程度)として確保してあった予算が、次年度使用となる。

次年度使用額の使用計画

上記の理由で示した2件について、予定どおり使用する。
1.7月に聴覚刺激を用いた実験を開始する予定であるので、聴覚刺激提示用のアンプを購入する。
2.オープンアクセスの学術雑誌、Frontiers in Psychologyへの投稿論文を修正投稿中である。受理され次第、掲載料が発生するので、速やかに支払いを行う。5月中の使用となることが予測される。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Precision and Bias in Approximate Numerical Judgment in Auditory, Tactile, and Cross-modal Presentation2016

    • 著者名/発表者名
      Tokita, M., & Ishiguchi, A.
    • 雑誌名

      Perception

      巻: 45 ページ: 56-70

    • DOI

      10.1177/0301006615596888

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 分散識別課題における刺激作成法、刺激属性、要素数の効果 ―バラツキ認知研究の予備実験として―2016

    • 著者名/発表者名
      時田みどり、石口彰
    • 雑誌名

      認知感性科学年報

      巻: 12 ページ: 1-6

  • [学会発表] 一致タイミング・スキルの規定因とその学習効果2015

    • 著者名/発表者名
      時田みどり・楊毅・石口彰
    • 学会等名
      日本基礎心理学会第34回大会
    • 発表場所
      大阪樟蔭女子大学(大阪府東大阪市)
    • 年月日
      2015-11-28 – 2015-11-29
  • [学会発表] Variance Discrimination Between Different Visual Properties Using Method of Adjustment2015

    • 著者名/発表者名
      Tokita, M., & Ishiguchi, A.
    • 学会等名
      56nd annual meeting of the Psychonomic Society, Chicago
    • 発表場所
      Chicago, IL, USA
    • 年月日
      2015-11-19 – 2015-11-22
    • 国際学会
  • [学会発表] 分散識別課題における刺激群作成法の比較2015

    • 著者名/発表者名
      石口彰・時田みどり
    • 学会等名
      日本心理学会第79回大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2015-09-22 – 2015-09-24

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi