研究課題
本研究課題では、高い集中を要求する課題に取り組む際の妨害情報の抑制メカニズムについて、特に不安感の高低がどのような影響を及ぼすかを心理物理実験並びに脳活動計測を用いて検討し、不安感が高い場合の心的特性を明らかにし、エラーを生じさせるメカニズムの解明につなげることを目標として取り組みを進めてきた。平成26年度は、不安と妨害刺激の抑制の関連についてパラメータを操作し検討を行った。特に、課題非関連に呈示される表情の効果について、課題非関連刺激の配置と数を操作して妨害抑制過程に及ぼす影響と不安特性の関係について焦点を当て、検討を行った。その結果、課題非関連刺激の数と影響の大きさについて一定の関係が見いだされた。さらに、脅威性の高低により注意が捕捉される程度に影響がみられるかについて印象評定と心理実験を行った結果、脅威性が低い場合には注意が捕捉される程度は低いことが示された。27年度は、前年度の成果を受けて、妨害刺激の物理的特性について操作を加え、より初期の視覚処理過程での操作が、感情価を持つ刺激に対する注意捕捉や配分に影響をどのように及ぼすかを検討したところ、妨害刺激の物理的特性の操作は検出成績に影響を及ぼすことが示された。しかし、不安との関連については、明確な相互作用は認められなかった。最終年度においては、課題非関連の脅威情報の知覚的負荷を操作し、それらに対する抑制と不安の程度について検討を行った。知覚的負荷の高低に関わらず高不安者は脅威情報の抑制が困難になることが示されたが、脅威でない感情情報は、知覚的負荷が低い場合には抑制が可能であることが示唆された。これらの結果から、注意の課題非関連情報の抑制と、それらの刺激の物理的特性、不安の感じやすさに対する個人特性の関係性についての新たな知見が得られた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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