目的遺伝子の過剰発現時期および発現量を任意に制御できる、テトラサイクリン発現誘導システム (Tetシステム) を用いて、餌に含まれるドキシサイクリンによって脳特異的にケトン体代謝酵素であるsuccinyl-CoA:3-ketoacid CoA transferase (Scot) を過剰発現させたマウスを作成した。これらのマウスを用いて、睡眠記録および行動解析を行った。その結果、脳特異的Scot過剰発現マウスでは、不安様行動、うつ様行動の増大、認知機能の低下が認められた。睡眠解析について、脳特異的Scot過剰発現マウスでは、ノンレム睡眠時のslow-wave activity (SWA) の増大および、レム睡眠時のθパワーの増大が認められた。断眠後におけるSWAの増大(リバウンド)も、コントロールマウスと比較して増大していた。以上のことから、中枢ケトン体代謝は睡眠を始めとした高次脳機能調節に関与することが明らかとなった。
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