研究課題/領域番号 |
26380994
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
星 玲子(柴玲子) 東京電機大学, 情報環境学部, 研究員 (90291921)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音楽 / 構造 / 情動情報 / 情報伝達 / 数値化 / 脳機能計測 / fMRI |
研究実績の概要 |
本研究者はこれまで、音楽の表現力および情報伝達力を調べるために、その構造自体を体系的に分析するモデルの構築およびその生理心理学的検証を行ってきた。その結果、旋律と機能和声の組み合わせにより終止度の異なる終止構造が構築され、音楽階層構造の基盤となる事を明らかにした。さらに特定の終止構造の聴取により、次の和音に対する期待の脳活動が生起する事を明らかにした。本研究の目的は、この音楽階層構造モデルを利用し、音楽構造とその情動情報伝達能力との関係について、心理学的、生理学的計測により分析するとともに、EEG, MEG, fMRIを組み合わせた脳機能計測により、その神経基盤について明らかにする事である。 まず、音楽階層構造モデルを利用した、生理心理指標をもとに、旋律と機能和声の組み合わせに対する心理的音楽情動評価を数値化を行った。その結果、「終止構造D-T」を構成する和音の「最高音の楽音」および「最低音の楽音」が終止度に影響を与える可能性が示唆された。この成果は、第10回感性工学会春季大会にて、「音楽の終止構造による終止感」というタイトルで口頭発表を行った。また、fMRI 計測を用いた、音楽階層構造の構成音により生起する脳活動の計測と評価を行った。その結果、終止形1型の課題曲の聴取時に、古典的な情動回路の一部とされエピソード記憶の形成に関わる海馬傍回と運動機能や意思決定への関与が示唆されている被殻に、他の課題曲よりも有意に大きな脳活動が観察された。音楽の情動情報を処理する過程において,音楽を分節化しまとまりを認識する機能と、これらの機能との関連についてさらに調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究者はこれまで、音楽の表現力および情報伝達力を調べるために、その構造自体を体系的に分析するモデルの構築およびその生理心理学的検証を行ってきた。その結果、旋律と機能和声の組み合わせにより終止度の異なる終止構造が構築され、音楽階層構造の基盤となる事を明らかにした。さらに特定の終止構造の聴取により、次の和音に対する期待の脳活動が生起する事を明らかにした。本研究の目的は、この音楽階層構造モデルを利用し、音楽構造とその情動情報伝達能力との関係について、心理学的、生理学的計測により分析するとともに、EEG, MEG, fMRIを組み合わせた脳機能計測により、その神経基盤について明らかにする事である。 本研究では、計画書に記載した通り、まず、音楽階層構造モデルを利用した、生理心理指標をもとに、旋律と機能和声の組み合わせに対する心理的音楽情動評価を数値化を行った。その結果、「終止構造D-T」を構成する和音の「最高音の楽音」および「最低音の楽音」が終止度に影響を与える可能性が示唆された。この成果は、第10回感性工学会春季大会にて、「音楽の終止構造による終止感」というタイトルで口頭発表を行った。 また、研究計画書では、本年度後半にEEGとMEG計測による計測と数値化を行う予定であったが、研究施設内の両装置が故障のため使用することができなかった。そのため、急遽計画を変更し、fMRI 計測を用いた、音楽階層構造の構成音により生起する脳活動の計測と評価を行った。その結果、終止形1型の課題曲の聴取時に、古典的な情動回路の一部とされエピソード記憶の形成に関わる海馬傍回と運動機能や意思決定への関与が示唆されている被殻に、他の課題曲よりも有意に大きな脳活動が観察された。fMRI計測による音楽構造と情動情報伝達との関係分析は次年度以降の計画のものであり、十分研究成果を挙げていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、音楽階層構造モデルを利用した、生理心理指標をもとに、旋律と機能和声の組み合わせに対する心理的音楽情動評価を数値化を行った。その結果、「終止構造D-T」を構成する和音の「最高音の楽音」および「最低音の楽音」が終止度に影響を与える可能性が示唆された。この結果をもとに、音楽構造を構成する和音の時系列的連続性について数値化を行い、詳細に分析し、モデル化を試みる。 また本年度の計画に記載されていたが、装置の故障のため行えなかったEEGおよびMEGによる音楽階層構造の構成音の逸脱により生起するミスマッチ反応の大きさによる聴覚皮質における音楽情動評価の数値化計測を行う。EEGは現在修理中であり、またMEGは他研究機関での借用を検討している。上記に記載した詳細な生理心理計測の結果をもとに課題を作成し計測と分析を行う。 さらに本年度開始した、fMRI 計測を用いた、音楽階層構造の構成音により生起する脳活動の計測と評価を継続して行う。すでに得られている皮質下の脳活動と聴覚皮質内に表象されるMMNおよびMMFとの関係性についての分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度行う予定だったEEGとMEGが装置故障となったため、fMRI計測に切り替えて研究を行った。そのため当初予定していた実験協力者に支払うための謝金分が、次年度使用額として繰り越されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、音楽構造と生理心理指標との解析結果に基づく詳細な計測及び解析とそのモデル化のために研究費を使用する。また、本年度装置故障により行えなかったEEGおよびMEG計測と実験協力者への謝金として研究費を使用する。さらに本年度開始した、音楽構造と情動情報処理に関する皮質下の脳活動解析のためのfMRI計測と解析に研究費を使用する。これらの結果の発表のための学会参加および論文発表のために研究費を使用する。
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