研究課題/領域番号 |
26380995
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
森田 泰介 東京理科大学, 理学部, 准教授 (10425142)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 無意図的想起 / 認知過程 / 加齢変化 |
研究実績の概要 |
思い出そうとする意図がないにもかかわらず,記憶がふと浮かんでくる現象は無意図的想起と呼ばれる。われわれが記憶情報を利用する事態の多くが無意図的想起事態であるにもかかわらず,これまで無意図的想起に関して明らかになっていることは,意図的想起に比して極めて少ない。特に,無意図的想起の加齢変化についてはほとんど明らかになっていないのが現状である。この現状は,未曾有の高齢社会を迎える本邦にとって高齢者の実態の理解とその認知的・精神的健康の維持・増進のための知見を得ることが極めて重要な課題であることを考えると,不満足なものであるといえる。そこで,本研究では無意図的想起の認知過程や機能の加齢変化について検討することを目的とした。平成27年度には,無意図的想起を支える認知過程の加齢変化の検討,及び認知活動や精神的健康において無意図的想起が果たす役割の加齢変化の検討を行った。具体的には,若齢者及び高齢者を対象とした実験・調査を実施し,展望的記憶課題やリアリティモニタリング課題の遂行と無意図的想起の生起との関係が加齢によりどのように変化するのか,未来事象・過去事象に関する無意図的想起と侵入思考傾向との関係が加齢によりどのように変化するのか,マインドフルネスにおける個人差と無意図的想起における個人差との相関関係が加齢によりどのように変化するのかについて,無意図的想起の実験法および質問紙調査を用いて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には,無意図的想起を支える認知過程の加齢変化の検討や,無意図的想起が認知活動や精神的健康において果たす役割の加齢変化について検討を行う予定であったが,展望的記憶課題の遂行,リアリティモニタリング課題の遂行,マインドフルネス,侵入思考傾向等と無意図的想起の加齢について予定どおり実験的・調査的検討を進めることができた。またこれらの知見は31st International Congress of Psychologyや20th Annual Meeting of the Association for the Scientific Study of Consciousnessにて発表されることが決定している。以上のことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
得られた知見をより確固としたものとするために,実験・調査を引き続き行いつつ,得られた知見を説明可能な認知モデルを洗練させる。また,無意図的想起のなかでもこれまでは過去の出来事の無意図的想起や未来の予定の無意図的想起の加齢変化を検討対象としてきたが,今後は音楽の無意図的想起(イヤーワーム)の加齢変化についても実験的・調査的に検討し,その知見をモデルに組み込むことにより,より一般性の高い無意図的想起のモデルの構築を目指していく。さらに,無意図的想起が有する最大の特徴である想起意図の内実を解明すべく,半意図的想起事態と無意図的想起事態とで,加齢変化の見られ方や想起される事象の詳細さ等が異なるのかについて検討を加えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも謝金額が低くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と今年度使用額を合算したものを活用し,さらに実験・調査の規模を拡大することによって,より信頼性の高い実験結果が得られるようにする。
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