研究課題/領域番号 |
26381002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 美穂子 北海道大学, 大学文書館, 技術専門職員 (70455583)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 帝国大学 / 学位令 / 博士 / 学位 / 女性研究者 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、「1898年勅令第三四四号の学位令下における女性の学位請求の実相」を研究課題とし、お茶の水女子大学附属図書館、東京大学文書館、国立国会図書館東京本館、京都大学大学文書館、国立国会図書館関西館等において、資料調査を行った。 資料調査をもとに、論文を発表し、以下の内容を明らかにした。1898年改正の「学位令」下では、1905年に宇良田タダが学位請求をした事案があったにもかかわらず、1900~1920年代前半に女性に学位が授与されることはなかった。その背景として、1898年改正の「学位令」下における男性への学位授与の条件と特色について、札幌農学校・東北帝国大学農科大学(1907~1918年3月)・北海道帝国大学農科大学(1918年4月~1919年2月)・北海道帝国大学農学部(1919年2月~1920年7月)の教官・卒業生の学位取得状況(農学・理学・林学・獣医学博士)を事例として、分析した。その結果、1898年学位令下のおける男性の学位取得者(農学・理学・林学・獣医学博士)は、学士号を取得後に、専門学校・帝国大学の教官及び台湾総督府・農商務省の技師など、研究・技術職に就いていた者が大部分であった。男性による学位取得は、各自の研究実績が学術上に貢献し、実際上に有益であることを証明する方策のひとつであり、各自の職業上の昇任にも大きく関与するものであった。それと同時に、所属・出身校の大学昇格運動の一環に位置づくものであった。 以上のことから、学歴上で不利な立場にあり、研究職への職業進出がはばまれていた女性たちには、1898年改正の「学位令」下では、学位授与の条件が整わない状況であったことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、1898年改正の「学位令」下において、学位審査を行い得た2帝国大学(東京帝国大学、京都帝国大学)について、学位審査関係文書の資料調査を行い、資料状況の把握及び関連資料の収集を予定通り進めることができた。 また、1920年改正の「学位令」下において博士号の学位を取得した女性について、国立国会図書館関西館に保管されている学位論文を調査し、あわせて、出身校(女子高等師範学校、女子医学専門学校等)の同窓会誌・新聞・雑誌等への研究・教育に関する発言、回顧録・小伝等を収集して、その学歴・キャリアに関する資料調査を進めた。 論文発表では、女性が学位を取得する前史にあたる、1898年改正の「学位令」下における男性の学位取得の条件と特色を検討し得た。 以上により、おおむね目的に沿って計画通りに研究が進展しているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、「1920年勅令第二百号の学位令における女性の学位取得者の誕生」を課題とする。1927年保井コノの理学博士号の取得を端緒として、1929年以降、女性の学位取得者が輩出された。保井コノをはじめ、保井につづいて、理学・農学博士号の学位を取得した女性は、その大部分が東京女子高等師範学校卒業生であることを把握している。そこで、平成27年度は、東京女子高等師範学校に着目して、学位取得者を輩出した背景を考察し、学位取得者における学歴・研究分野等を分析して、論文を発表する。 資料調査先は、(1)現地における資料調査協力が見込まれている国立台湾大学校史館・図書館に速やかに赴き、(2)京都大学大学文書館、(3)東北大学史料館、(4)国立国会図書館(東京本館・関西館)において、学位審査関係文書・学位論文・回想録等の資料調査を継続して行う。 平成28年度は、引き続き、「1920年勅令第二百号の学位令における女性の学位取得者の誕生」を課題とする。1931年西村庚子の医学博士号の取得を端緒として、翌年以降も、医学博士号の学位を取得する女性が連続した。出身学校は、東京女子医学専門学校、帝国女子医学専門学校が大部分を占めたことを把握している。そこで、平成28年度は、東京女子医学専門学校・帝国女子医学専門学校に着目して、学位取得者を輩出した背景を考察し、学位取得者における医師としてのキャリアの形成・研究分野等を分析して、論文を発表する。 資料調査先は、(1)九州大学大学文書館、(2)大阪大学アーカイブズ、(3)東京女子医科大学図書館・東京女子医科大学大学史資料室、(4)熊本大学図書館、(5)国立国会図書館(東京本館・関西館)において、学位審査関係文書・学位論文・回想録等の資料調査を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額40,236円については、(1)3月2日に発注した物品費(図書:1,600円)、(2)3月5日に発注した物品費(図書:9,786円)、(3)3月9日に発注した物品費(図書:4,989円)、(4)3月4日に発注した物品費(消耗品:12,441円)、(5)3月12日に発注した物品費(消耗品:11,420円)として使用したが、支払いが4月であるため、当該研究費が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由により生じた次年度使用額は、実質的には当該年度に使用しているが、平成27年度の支出額として計上する。
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