今年度は精力的に資料調査を実施した。 研究成果としては、「学力観」という語について再検討を行った結果、近代日本の中等教育機関(中学校・高等女学校・実業学校・師範学校)の修了程度で実施されていた検定試験の内容およびその制度的な変遷(特に合格者に対して付与される資格・特典の内容変化)のみならず、その成果を最も直接的に活かす場である高等教育機関の入学試験に注目し、そのサポートのための機関である予備校が誕生する経過について、地方都市である中京圏を選んでケーススタディを実施した。この結果、①予備校誕生の契機となるのは当該地域への高等教育機関(なかんずく高等学校や人文・社会科学系の専門学校)の設置であること、②当該地域において最初に誕生した予備校の経営戦略が後発の予備校のそれに多大な影響を与えること、③校長あるいは看板講師に突出した名声がないと永続しないことを見出した。この成果を論文化し、北海道教育大学紀要に掲載した。 この他、上述した検定試験の中で最も一般的な「専門学校入学者検定試験」(専検)に関していくつかの有益な資料を収集して整理文責を終えたものの、時間切れのため論文化するには至らなかった。特に専検の実施にあたって生じた事故の処理に関する資料については、現代においても参考にするべき有益な示唆が得られるものである。今後は事業終了後になるものの、成果を基にした学会発表・論文化を行う予定である。
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