平成28年度はこれまでの調査をふまえながら、3.11東日本大震災後、東北沿岸3県の被災地での生活綴方・作文教育実践等の展開過程、東北沿岸の教育実践の営みの実際と意義について、総括的な書誌整理、分析・考察を試みた。 第一に、実践の実態把握、実践報告資料等の収集を進めるべく、教師たちが集う研究集会に参加した。「東北民教研」秋田・男鹿集会や教育科学研究会全国大会(大東文化大学)、「東北作文の会」集会、岩手県教職員組合教育研究集会や「岩手民教研」集会等の複数の教育研究集会に赴き、実践報告と討論を聴き討議に参加し、東北沿岸被災地および東北各地域での現場教師の教育実践の営みを捉えた。 第二に、各地における教育実践の営みについて、岩手県宮古市及び釜石市で被災地教育実践に取り組む複数の小・中学校教師や、特に、福島・南相馬市の生活綴方教師・白木次男氏に、複数回の現地聴き取り調査を行い、被災地における地域に根ざした総合学習実践や、生活綴方実践の実際を実地に当事者の声から学び、教育実践記録・研究会報告資料等を収集・分析し、被災地域の教育実践の実像に考察を加えた。それら教育実践の努力の底流には東北の昭和戦前期以来の北方性教育運動の足跡があったことを実証的に確かめた。 関連して、3・11震災後の東北沿岸における教育実践の展開全体の実際を探る基礎資料を作成すべく、震災からそのおよそ5年後までの間、東北沿岸被災3県における現地の教師等が書き綴った教育関係雑誌論稿等の文献一覧の作成を行った。3・11後の複数の教育雑誌には、被災地の子どもと学校・教職員の現状や課題の現実、津波・原発被災のなかの学校と地域の人々の苦境と受苦体験、教育実践への格闘等を現場教師等が書き記した多様な論稿が数多く掲載されてきた。その書誌を県別に、時系列に沿って年度ごとに整理・記述し、列挙した一覧を文献一覧・目録のかたちで公表した。
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