研究課題
本研究は、第二次大戦前日本における小学校・国民学校教員検定(以下、初等教員検定)の通史的事例の府県比較研究として、1)特徴的な都道府県の初等教員検定制度の形成から廃止までの過程を明らかにし、2)各府県の初等教員養成システムにおける教員検定制度の位置づけを明らかにした上で府県比較を行い、3)初等教員養成において教員検定が果たした役割について考察することを目的としていた。対象としたのは、東京、大阪、栃木、群馬、岡山、山口の各府県である。平成29年度は、平成28年度までの研究成果を精緻化し、研究成果を総括することとした。1)初等教員検定制度の根幹をなす、初等教員検定関係規則に関しては、対象とした府県の規則はおおよそ確認することができた。いずれも府県令により規定されており、1900年以前は「小学校教員検定」の字句を含み、1900年以降は「小学校令」の字句を含む名称で規定されていた。これらの関係規則のもとで、合否判定基準を含む検定内規が作成され、検定内規は非公表とされていた。唯一、栃木県だけは合否判定基準に関する規定が関係規則に含まれ、公表されていた。2)対象化した府県では、教員供給において教員不足、特に本科正教員不足の期間が長く続き、その際に師範学校増設や学級増はままならず、教員検定制度を活用した教員養成講習会や臨時教員養成所が設置された。教員検定関係規則も試験検定の実施回数が改められたほか、臨時試験検定規定が活用された。大阪府のように非師範学校系諸学校の卒業生に正教員免許取得の資格を付与することを告示として公表するところも存在した。3)初等教員検定は当初、教員管理を主たる目的とし、師範学校卒業者にも適用されるものとして出発し、その点は継承されたが、明治後期以降は正教員の確保・供給を補完するために不可欠な制度として機能したと考えられる。
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宇都宮大学教育学部研究紀要
巻: 68 ページ: 303-327