研究課題/領域番号 |
26381014
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
古屋 恵太 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50361738)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジョン・デューイ / 真正性 / 主体 / 探求 / ジェーン・アダムズ / 労働博物館 |
研究実績の概要 |
平成28年度に行った研究は、国内での研究と国外中心で行った研究とに大きく分けて記すと以下の通りである。 1.国内での研究。現在、「真正の学び」をけん引している二つの潮流、すなわち、Wiggins(1998)に代表される「真正の評価」論とNewmann(1996)に代表される「真正の学力」論を検討した。また、アクティブ・ラーニングに見られる、日本の主体的で対話的で深い学びを目指す動向を分析する視点を前年度に引き続いて提示するために、「子ども主体の授業」をデューイの主体論から考察した。その成果が「教育哲学で考察する『子ども主体』の授業」及び「求められる『本物の学習』=『真正の学習』」(平野朝久編『教職総論』学文社、2016年。)である。 2.国外中心で行った研究。アメリカのイリノイ大学シカゴ校の客員研究員として研究した時期(2016年9月初めから11月末まで)を中心として、デューイの『論理学』(Logic)、『思考の方法』(How We Think)等のテクスト・クリティークを行った。これと前年度までの真正性に関する研究を総合し、真正性の観点からデューイの科学的探求の特徴を描き直す作業を行った。また、前年度に行ったデューイの芸術的著作に関する検討を踏まえて、真正性の観点からデューイの美的探求の特徴を描き直す作業を行った。これについては、デューイに影響を与えたジェーン・アダムズの「労働博物館」の実践を論証の題材として用いることで、「実演」、「劇的に表現すること」という新たな観点を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会的構成主義を中心として、現代の「真正の学び」論の特徴や課題を考察したり、思想史的観点から、デューイにおける真正性を「探求」過程での「誠実」さに見出す考察を行ったり、予定していた研究はおおむね進めることができた。研究代表者が年度末に病気となったために、平成28年度中に研究をまとめることが困難となったが、海外で客員研究員として研究を行う期間を得たことで、本研究課題についての研究の遅れは取り戻し、予定していた研究を行うことができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、研究を進めることで新たに出てきた二つの課題と取り組んだ後、研究成果をまとめる作業を行う。課題の一つは、平成27年度に確認された、真正性が教育に対する合理的統制の手段として位置づけられてしまうという問題であり、もう一つは、平成28年度に新たに得た、「実演」、「劇的に表現すること」という観点を真正性とどのように整合的に位置づけるかという問題である。以上の課題と取り組んだ後、「真正性の観点から見たデューイの科学的探求の考察」と、「真正性の観点から見たデューイの美的探求の考察」という二つの未発表論考を含む博士論文を完成するとともに、研究成果報告書を完成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成28年度末に病気となり、補助事業期間延長承認申請を行うこととなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
事業の最終年度として、研究成果報告書の作成・印刷等に使用する。
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