研究課題/領域番号 |
26381016
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小玉 亮子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50221958)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 幼児教育 / 家族 / 母 / ドイツ / ヴァイマル期 / 社会史 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究は、ヴァイマル期ドイツにおいて幼児教育の制度化過程が進む中、家族がどのように議論されたのか、そしてそのことで、幼児教育と家庭教育の関係がどう規定されることになったのかを、明らかにすることを目的としている。研究対象は、1920年代の教育政策・福祉政策に関わる議論や、教員や保護者に向けた雑誌に見られる言説である。 今年度は、2015年10月13日に「教育における母なるもの(の呪縛)―ジェンダー視点に立つ歴史研究の試みから―」というテーマで、教育思想史学会第25回大会シンポジウムのシンポジストとして報告を行った(於慶応義塾大学)。ドイツの教育史の中で、既に19世紀からドイツ教育学の底流に流れていた「母なるもの」が、次第にその意味を強化しながら、20世紀には、教育の基盤として立ち現れ、強調されているプロセスを追った。ここで、教育学における家族論がいかにジェンダーバイアスに基づくものであることを浮かびあがらせることによって、本研究において理論的な足場を形成することができたと考えている。なお、本報告は、論文にまとめており、2016年度の教育思想史学会編『近代教育フォーラム』において、掲載が予定されている。 上記に加えて、2015.12刊行の 宇佐見・小谷・後藤・原島編集代表『世界の社会福祉年鑑 2015 特集 各国の子ども政策と社会福祉』(旬報社、総ページ数457)に論文「ドイツにおける子育て政策の現状と課題―「家庭的であること」をめぐって―」(pp.47-56)を執筆・掲載した。これは、現代のドイツの子育て政策の源流が、幼児教育制度が制度化されたヴァイマル期にあること、現在のドイツの問題状況が既にヴァイマル期に孕まれていたことを明らかにするものである。この問題状況の核となっていることが、ヴァイマル期の家族イメージにほからないことを分析したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表、論文執筆など、今年度は、特に教育学における家族イメージのジェンダー分析について、理論的にまた俯瞰的な研究成果を上げることができた点は、本研究に取って意義があったと考えている。このために、9月にドイツベルリンで資料調査を行ってきたが、ベルリン州立図書館や教育史研究図書館において、今年度の発表や論文執筆のための重要な資料を入手することができた。 幼児教育については、9月のEuropean Early Childhood Education Research Association(26th バルセロナ)に参加し、欧米の研究者との意見交換ができたことも本研究を進めるにあたって、意義の大きいものであった。これを踏まえて、28年度は、幼児教育に焦点化した分析をまとめていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の所、家族イメージに関する分析は進んできているが、さらに、幼児教育サイドの担い手たちに関する分析に力を入れたいと考えている。引き続き、28年度もベルリンにおける資料調査を予定しているが、当時の幼児教育業界で力を持ったペスタロッチ・フレーベルハウス関連の文献の資料調査に力を入れたいと考えている。幼児教育者たちの家族観についてのジェンダー分析を行いたい。 来年度も引き続き、学会発表を行い、研究論文によるその成果の公表を行なっていく予定である。
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