研究実績の概要 |
本研究は、ヴァイマル期ドイツを中心として20世紀前半のドイツにおいて幼児教育と家族の関係がどのように議論されたのか、雑誌や会議の議事録等の歴史的資料から明らかにすることを目的としている。 2018年は、前年度資料収集に行くことができなかったため、その資料を補完する調査のため、主としてベルリンの教育史図書館での資料収集を行なった。 それらの資料をもとに、まず、比較家族史学会の論集の中に、論文として、「二十世紀初頭のドイツにおける母の日と教育」(小山静子・小玉亮子編著『子どもと教育-近代家族というアリーナ-』日本経済評論社, pp.141-174、総ページ数294)を執筆した。ここでは、教育における母性の展開と母の日の関係について論じた。 さらに、教育史学会大会において、研究成果の発表を行なった(2018.9.30 「母親ということと専門家ということ―リリー・ドロシャーの直面したもの―」教育史学会第62回大会 一橋大学(個人発表)。本発表では、20世紀初頭の幼児教育を牽引した人物の一人であって、ペスタロッチ・フレーベルハウスの代表も務めたリリー・ドロシャーという一人の人物に焦点を当てた。彼女が二つの大戦という激動期に、幼児教育の存続を目指す中で、幼児教育の思想におけるキー概念として、母性を拠り所に活動を展開したこと。そして、確かに、存続は可能となったものの、結果的に、幼児教育の地位が低め、ナチスを支える母体となって行くプロセスを明らかにした。現在は、この学会発表を論文にまとめているところである。 本研究はヴァイマル期に焦点化したものであったが、研究を進める中で、どうしてもナチス期まで視野に入れて分析する必要があることが明らかになった。母性がナショナリズムと親和性を持つことを、ファシズムとの関係で明らかにすることを次の研究課題としたいと考えている。
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