研究実績の概要 |
本研究は、欧州高等教育における大学教員の初期キャリア段階の教育職能開発プログラムの正規化に着目し,その学術性の核となる新たな専門分野としての「大学教授学 (University Pedagogy)」の形成過程およびその内容構成の全体像を明らかにすることを目的とした。 本年度は、計画に従って残りの海外調査研究を継続するとともに、海外調査全体で得られた資料情報を整理して、「大学教授学」の専門分野としての構造を考察した。 研究期間全体を通した結果として、概ね次のことが明らかになった。一般に、専門分野とは、学問として一定の理論もしくは固有の論理に基づいて体系化された知識と方法を備えており、大学内ではその専門を探究する学部、学科や研究室を、大学外では専門家集団としての学会等の組織を構成しているとされる。欧州でのいくつかの事例によると、「大学教授学」における「理論」は、認知心理学や認知科学の成果に加え「現象記述学」による「学習論(学生はいかに学ぶのか)」、学生の自立的、主体的学習を可能にする「教育デザイン論」(Constructive Alignment)および「教育実践論」を中心に体系化されつつある。 さらに、この専門分野は、それら理論をもとに授業現場での試行と開発を通した実践知および方法を「省察」し、新たな専門知識の創造と蓄積を行うプロフェッショナルの育成と、その集団による実践コミュニティ(Communities of Practice)の形成を目標としていることが特徴である。「discipline」の意味は、学問のほか「弟子(disciple)」を原義とし訓練、修養、躾、規律などの意味があり学問としての学習方法(作法)を学ぶという意味があるが、「大学教授学」の学習方法としては「省察的な実践家」のアプローチがとられている(その他内容構造の詳細は研究成果報告書に記載する)。
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