研究課題/領域番号 |
26381018
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
太田 孝子 岐阜大学, 留学生センター, 教授 (00293580)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 留学生支援 / 異文化理解 / 内鮮融和 |
研究実績の概要 |
Ⅰ.柳原吉兵衛が朝鮮人女子学生に対して行った支援活動に関する諸資料の収集・分析等を通し、以下を把握した。 ①梅田安之が執筆した『青霞翁柳原吉兵衛傳』(全3巻、1948年刊、私家本)はこれまで入手が不可能だったが、曾孫の柳原高志氏によって2013年12月に復刻された本書を入手し、朝鮮人女子学生への支援を含む吉兵衛の生涯を把握することができた。また、柳原家にとって吉兵衛は今でも話題に上る人物であるなど、柳原高志氏から吉兵衛の人となり・影響力等を聴取した。②樋口雄一は著書『協和会-戦時下朝鮮人統制組織の研究』(社会評論社、1986年)の中で、柳原吉兵衛の活動を「朝鮮人としての精神的生命を奪い去る非道の行為」と断じているが、樋口の著書を用いて「資料2柳原吉兵衛文献」(《大阪教区宣教協議会学びのための資料》所収、1997年)を記述した聖公会大阪教区宣教協議会実行委員会及び同委員長山本眞に対し、柳原家が同年11月に提出した意見書を入手し、意見書執筆の経緯、柳原家の疑念、吉兵衛に対する思い等を把握した。③3回(1927年、28年、30年)にわたって組織された「朝鮮女子教員内地視察団」に関する諸資料(来日までの遣り取り、関係部署との諸連絡、視察地・視察内容、参加者の感想等)を検討し、吉兵衛の支援の実態及び視察の全体像を把握した。また、3回の視察の共通点・相違点等についても検討した。 Ⅱ.関屋貞三郎(朝鮮総督府学務部長、朝鮮人女子を支援した関屋依子の夫)に関する諸資料の収集・分析を通し、以下を把握した。 ①柳原吉兵衛が関屋貞三郎に宛てた文書(1928年8月16日付、第二回朝鮮女子教員内地視察の際、京都御所拝観が許可された旨の報告とお願い)を発掘でき、両者の関係が初めて明らかになった。②関屋貞三郎の文章「基督教と新日本」(『基督教教養講座』所収、春光社、1948年刊)により、初めて関屋貞三郎とキリスト教の関係を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はこれまで不明だった文献・資料等を発掘・入手することができたため、当初計画以上に研究が進展した。主な理由は以下のとおりである。 ①柳原吉兵衛が行った朝鮮人との交流を「負の遺産」と断定した聖公会大阪教区宣教協議会に対して、柳原家(世話人柳原一男)が送った意見書を入手し、一族が抱いた疑念とその理由、吉兵衛に対する一族の評価・影響力を把握することができた。 ②関屋貞三郎と柳原吉兵衛の関係を示す「関屋宛て吉兵衛の文章」を発掘することができたため、これまで不明だった両者の関係が明らかになった。 ③これまでは関屋貞三郎のキリスト教への姿勢が不明だったが、それを裏付ける資料(関屋著「基督教と新日本」)を入手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.「日本聖公会歴史研究会第25回歴史研究者の集い」で研究の成果を発表し(題目「柳原吉兵衛の支援活動-朝鮮人女子教員内地学事視察を中心に」、5月29日、於:立教大学)、平成26年度の研究のまとめを行う。 2.平成27年度研究計画のうち、以下に焦点を当てながら調査・研究を進め、柳原吉兵衛が行った支援活動の全容把握に努める。 ①『社会事業研究』「卑見」に柳原吉兵衛が寄稿した記事を収集・分析し、先行研究(特に朴宣美の意見)との比較・検討を行う。 ②『向上』(№1~27)を精読し内容を検討後、先行研究(特に朴宣美の意見)との比較・検討を行う。 ③『櫻槿の華』(№1~8)を精読し内容を検討後、先行研究との比較・検討を行う。
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