最終年度の研究成果としては、ジョン・デューイの反省的探究教育理論の考察に基づいて、20世紀と21世紀の教育をつなぐ理念について検討した。 今年度は、第一に、日本デューイ学会第60回研究大会において「デューイの実験的探究と21世紀の教育」を発表し、デューイの民主主義教育の理想と反省的探究についての関わりを再検討し、汎用的な知識や転移可能な知識の学習や習得の観点から探究する人間の教育について考察した。 第二に、「20世紀教育理論の変遷と課題―理想的実践主義から見た教育理論」『プラグマティズムを学ぶ人のために』(世界思想社)において、デューイの反省的探究教育理論を20世紀の教育理論との関連で検討し、探究する人間を育てるための条件として状況性、主体性、協働性の教育的意義について考察した。それによって、探究する人間のネットワークを構築するという理想を追求する立場を「深い民主主義」の観点から解明した。 第三に、「大学教育における汎用的知識技能の育成とその課題」『教育哲学研究』第113号において、現在の教育改革で論議されている主体的な学習や汎用力・転移可能な知識やスキルの学習との関連で、21世紀におけるわが国の教育の行方を検討し、自由で開かれた精神を育てる主体性の教育、高次のアクティブ・ラーニングとしての深い学習の特徴、行動する知性としての実践的知性を重視する大学でのリベラル教育などの特徴や課題について考察した。 これらの研究に基づいて、個性的な学習と深い学習を融合した日本的な共感的探究学習理論の基礎的考察を行なった。
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