本研究は、グローバルなリスク社会を生き抜くための強靭な思考力を通じて不安と不確実性を「基礎づけなき安全」に転換する<レジリアントな個>の育成のための哲学を開示することを目指す。そのために、アメリカ哲学がもつ「危機からの再生の哲学」としての革新的な意義を、実践性、学際性、国際性の諸側面から解明し、市民性教育や哲学教育における意義を示す。研究の手法として、哲学と教育の学際的・国際的対話を軸に、他なる自文化の超越を促す哲学と教育のクロスカレント領域を開拓することを目標とする。 繰り越しの最終年度である平成29年度(2017年4月ー2018年3月)は、海外共同研究者との英語共著が出版に向かい編集段階に入り、長年取り組んできた日本語共編著の最終ゲラの見直しが終わり、さらに研究課題に密接に関わる研究代表者の日本語単著の原稿の改訂作業が進んだ。イギリス教育哲学会では日本人として初の基調講演を行い、本研究課題の総括となった(2017年4月)。2017年11月にはワルシャワ大学において招待講演を行いアメリカ哲学を世界に発信する機会を得た。2018年3月にはイギリス教育哲学会において採択率が50%未満である審査受理付きの英語論文を発表し、次なる研究への布石を打つことができた。 研究期間全体を通じて、国際会議や国際学会での外国人研究者との共同パネル開催、アジアやアメリカでの招待講演などを通じ、不確実性の時代にアメリカ哲学がもつ国際的な意義がアメリカ、イギリス、フィンランド、フランスの研究者との国際ネットワークの中で明らかにされた。また政治学、文学、美学、音楽、宗教などの研究者との学際対話を通じて、哲学と教育の新たな学際領域が開拓された。
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