研究課題/領域番号 |
26381027
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 晶子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10231375)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育的タクト / 教師力 / 人類学 / 教育術 / 教育的判断力 / パフォーマンス / インクルージョン / 場 |
研究実績の概要 |
本研究は、教師の教育術を連繋させて働く教育的タクト(教育的判断力・教育術)の観点から、教師の専門性と実践力(教師力と総称)について人類学的手法による学校フィールド調査により抽出し、教師力養成プログラムを構築することを目指している。具体的には、ドイツ・ノルトラインウェストファーレン州のケルン市の学校と京都市の学校に、ケルン大学教育研究所のZirfas教授を代表とする研究チームと共同で入り比較調査を実施する。平成26年度は、比較調査の枠組みについて、京都市およびケルン市それぞれの学校関係者、前掲ケルン大学教育研究所と調整を行った。平成27年3月にはケルン市のHolweide総合学校でフィールド調査を実施した。調査では、ヴィデオグラフィー、参与観察、教師および生徒への聞き取りを行い、教師、生徒双方の学校内での活動にみるパフォーマンス性を抽出し分析した。また、自己の行為を、象徴的・役割演技的な行為として捉え、認知、身体、感情、場の質的側面に着目して振り返る、パフォーマンス分析の方法について検討した。さらに、平成27年度にドイツ側研究グループと共同で、京都市の学校において行う調査の枠組みについて詰めの協議を行った。ドイツ型3分岐制学校教育体系を克服する試みとして、1975年に創設されたHolweide総合学校は、学校段階では小学校段階から職業学校、さらには大学進学のためのギムナジウム段階までを含み、また、特別な支援を必要とする生徒との合同授業を実施するなど、インクルージョンをキーワードとしたドイツでも先進的取り組みで知られるモデル校として評価されている。多様なニーズをもつ生徒一人一人に対応するための教育方法やカリキュラム開発など、教師に求められる力量は極めて高い当該校のケースを通して、チーム力として機能する教師力のあり方への視点は、今後の日本との比較調査において重要となってくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人類学的な手法による日独学校比較調査の枠組みについて日独研究チーム双方の調査は順調に進んだ。ドイツでの学校調査を実施し、ヴィデオグラフィーによるパフォーマンス分析も進展した。平成26年度に掲げた研究の目的はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度7月には、京都市の小学校において、ドイツ側研究チームと合同でフィールド調査を実施する準備が進んでいる。チーム力としての教師力という観点も含めた、教師の実践経験振り返りについて、個別の聞き取り調査を併せて行うことにより、教師力発揮の実際的場面の分析や熟達度の検討について、よりきめ細やかなアプローチが可能になるのではないかと考え、平成27年度には実施に向けて準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力の承諾を得ていたZirfas教授の所属するケルン大学・教育研究所側の研究チーム構成および比較調査準備の作業が遅延したため、ドイツ側チームの来日が2014年度中に実現できなかったため、旅費が日本側の渡独による調査旅費のみの執行となった。またドイツでの調査が3月中旬であったために、ヴィデオグラフィーや聞き取り調査に関わる補助業務を依頼する時期が年度末となったため、補助なしで研究代表者が業務を行った。そのために人件費等に関わる執行はなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は7月にドイツ側チームが京都市の学校での調査実施および共同研究討議のために来日予定である。調査実施および比較調査に関わって前年度のデータも併せた分析を進める予定である。また、ヴィデオグラフィーによる映像データの編集のために、また生徒など個人の肖像権管理の観点から、専用のコンピュータを購入し対応することにしている。
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