研究課題/領域番号 |
26381032
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
米沢 崇 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20569222)
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研究分担者 |
久保 研二 島根大学, 教育学部, 講師 (90594698)
宮木 秀雄 山口学芸大学, 教育学部, 講師 (30710785)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教職実践演習 / 履修カルテ / 教員養成スタンダード / 教員養成の質保証 |
研究実績の概要 |
本研究では、教職志望学生の「最小限必要な資質能力」形成に資する効果的な教職実践演習のモデルを開発・提案することを目指している。 平成27年度(2年目)は、まず、平成26年度に実施した小学校教員養成系大学・学部の大学教員・大学事務職員を対象とした質問紙調査の分析を行った。その結果、教員養成スタンダードについては、その作成状況を把握するとともに、各大学・学部の特性や状況を取り入れながらスタンダードを構築していくことの必要性を指摘した。さらに、履修カルテについては、紙媒体での運用が多く、電子媒体での運用の困難さが明らかとなった。内容としては,これまでの学修の成果を確認し、自己評価に活かすためのものが多く挙がっていた。また、教職実践演習の内容・方法については、学校現場に出て行く上で最小限必要な実践的指導力の基礎・基本に当たる内容を重視していること、講義形式が中心であり、学校や関連施設・関連機関との連携・協力に関しての課題があることを明らかにした。 つづいて、デマンドサイドの視点として、小学校教員養成系大学・学部の教職志望学生(4年生)6名を対象に、1)教職実践演習のやり方や進め方について、2)履修カルテの作成・活用について、3)教員養成スタンダードの内容や活用について、4)大学4年間で身に付けた力について、インタビュー調査を実施し、そのデータの基礎的な整理を行った。 最後に、先進的な教員養成プログラムを展開しているTeachers College Columbia Universityに訪問調査を実施した。その成果として、Teachers Collegeにおける教員免許資格の獲得に向けた取組や教員養成の質保証に向けた取組について意見交換を行い、教職実践演習のモデル開発に向けて有用な情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度(2年目)は、平成26年度に実施した小学校教員養成系大学・学部の大学教員・大学事務職員を対象とした質問紙調査の分析・考察を行い、サプライサイドの視点から、教員養成スタンダードの作成・運用、履修カルテの運用・活用、教職実践演習の内容・方法に関する有用な情報を得ることができた。さらに、これらの成果を学会発表や学術論文を通じて発信することができた。 また、研究分担者2名と協議し、小学校教員養成系大学・学部の教職志望学生を対象とした調査を質問紙調査からインタビュー調査に変更し、大規模の小学校教員養成系大学・学部の4年生2名、中・小規模の小学校教員養成系大学・学部の4年生4名を対象にインタビュー調査を実施できた。これにより、デマンドサイドの視点からの具体的なデータを得ることができた。 この他に、教職実践演習のモデル開発に向けて、平成26年度(1年目)に実施できなかったTeachers College Columbia Universityへの訪問調査も実施し、先進的な教員養成プログラムに関する情報を得た。 以上のことから、教職志望学生の「最小限必要な資質能力」形成に資する効果的な教職実践演習のモデル開発という、本研究の目的の達成に向けて「おおむね順調に進んでいる」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度(3年目)は、以下のように研究を進める予定である。 まず、国公私立の小学校教員養成系大学・学部の大学教員と事務職員を対象に行った調査によって得られたデータの分析・考察をより精緻に行っていく。例えば、教職実践演習に対する意識に着目し、スタンダードの作成状況や履修カルテの運用方法、教職実践演習の内容・方法との関連についてサプライサイドの視点から検討する予定である。さらに、小学校教員養成系大学・学部の教職志望学生(4年生)6名を対象に実施したインタビュー調査のデータを質的データ分析手法の1つであるSCAT法(大谷、2008、2011)等を用いて、履修カルテや教員養成スタンダードを含む教職実践演習が教職志望学生の最小限必要な資質能力形成に及ぼす影響についてデマンドサイドの視点から明らかにする予定である。 つづいて、教職実践演習や履修カルテ、教員養成スタンダードについて先駆的に取り組んでいる国内の大学を中心に訪問調査を継続的に実施し、教職実践演習の内容及び方法、履修カルテの運用・活用方法、教員養成スタンダードの内実について情報・資料収集を行う予定である。 最後に、本研究を通じて得られた成果をもとに、研究代表者の所属大学における教職実践演習(小学校)での試行も踏まえ、教職志望学生の「最小限必要な資質能力」形成に資する効果的な教職実践演習のモデルを提案する予定である。また、学会発表や学術論文、報告書等を通じて広く社会に発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先述したように、小学校教員養成系大学・学部の教職志望学生(4年生)6名を対象としたインタビュー調査を2016年3月に実施したため、データ入力等の作業は次年度に繰り越すこととなった。また、先駆的に教職実践演習を行っている国内の教員養成系大学・学部への訪問調査を計画通り実施できなかった。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、研究分担者らとの連携をより一層密にして、先駆的に教職実践演習を行っている国内の教員養成系大学・学部を対象とした訪問調査を実施し計画的に執行する予定である。また、2016年3月に実施したインタビュー調査のデータ入力の予算を早急に執行する予定である。この他に、報告書やリーフレットを作成するなど、成果発信に予算を執行したいと考えている。
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