研究課題/領域番号 |
26381035
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
田中 昌弥 都留文科大学, 文学部, 教授 (60261377)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Narrative Inquiry / ナラティブ / 教育実践 / 学力 / 教師教育 / アクティブ・ラーニング / カナダ |
研究実績の概要 |
4月初頭、AERA大会(シカゴ)に出席しNarrative Inquiryの研究動向の調査、関係者達と研究交流を行った。 6月、世界のNarrative Inquiry関係研究者を集めて10年に一度開かれる国際学会、An Academic Home Place:An International Community in Teacher Education Conference(カナダ・アルバータ大学)に日本の研究者で唯一人invitationを受け、「Can Japanese Next-Generation Teachers Inherit a Narrative Sense for Education? -Significance of Narrative Inquiry for Teachers in Japan-」と題する発表を行った。 9月、日本臨床教育学会研究大会の課題研究(シンポジウム形式)にて「アクティブ・ラーニングと日本の教育実践 -ナラティブ的探究の観点から-」と題する発表を行い、アクティブ・ラーニングを通した学力形成の意義と問題点を、NIの視点から考察した。 12月、NIの問題意識と通ずる教育実践を行ってきた札幌市の小学校教師4名にインタビューを行い、彼らの教育実践における学力形成の考え方や方法とNIとの関連性について考察した。 2月、カナダでNIに基づく教育と研究を行っている小学校教師と研究者に、12月調査の対象であった日本の教師達の教育実践とインタビュー内容を説明した上で、カナダのNI関係者の立場からどのように考えるかインタビューを行った。さらに3月、後述の理由により自費での調査としたが、12月調査でインタビューした教師のうち2名に対して2月のカナダ調査の内容を説明し、NIと日本の教育実践観や学力観の異動について共同考察的なインタビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、本研究の成果を最終年度に国際学会にて発表することで、Narrative Inquiryと学力形成を関連づけて考察することが今日の学力問題にとって重要な意義を持つこと、また、それを可能とする実践研究や教師教育について、海外の研究者と議論する土俵を作るところまでを今回の科研費研究の目標の一つと考えていた。 しかし、思いがけず、世界のNarrative Inquiry関係者が一堂に会する、上述の国際学会で発表する機会を研究2年目の平成27年度の段階で与えられ、問題提起とそれまでの研究成果を発表することができた。これにより、日本の教育実践と本研究の意義についての理解が、特にカナダのNI主要メンバーの間で飛躍的に進み、その後の調査における意思疎通がかなりの程度スムーズになった。 国際学会での発表という目標は、上記6月の学会で満たされているとも言えるが、科研費研究の最終年度に向けて、発表許可のレフェリーがAERAよりさらに厳しいとされる国際学会Narrative Matters2016での研究発表に応募し、査読の結果、発表権を得ることができたため、現在、発表に向けた準備を進めている(当初はAERA大会での発表に応募することを予定していたが、本学の研究倫理規程の作成が間に合わなかったために断念せざるを得ず、それに代わるものとして、当初は落選の可能性が高いと判断して見送ることを考えていたNarrative Matters2016に応募した)。 国内でも日本臨床教育学会の課題研究で、本研究のテーマの一部となる内容について発表することができた。 調査については、AERA大会での研究交流、日本の教師に対するインタビューとその実践についての検討、カナダの教師、研究者に対するインタビュー、ディスカッションともほぼ予定した通り、あるいはそれ以上の水準で実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
4月初頭のAERA大会(ワシントンDC)にはすでに出席した。Narrative Inquiry関係の国際的な研究状況を把握すると共に、学会セッションへの参加とは別に、昨年度にインタビューをしたカナダの教員、研究者のうちAERA出席者とのディスカッションの時間を設けた。そこでは、3月に行った日本の教師たちへのインタビュー結果に基づいて議論をし、互いの重なりと違いがほぼ明らかになった。 今年度は、日本とカナダで往還的に行ってきた調査の内容について総括的に検討し、インタビューに応じるかたちで研究に参加してくれた日本の教師たちへの説明を通して、今後の学力形成につなぐ方向性を検討する。 6月の国際学会、Narrative Matters2016(カナダ・ヴィクトリア)では、「Narrative Inquiry sheds light on the secret of Japanese teachers’ culture: restorying in the elementary school classes」と題して発表を行う。日本の小学校教師たちが教員文化として受け継いできた、子どもたちの再ストーリー化を促すレベルからの深い学力形成の秘密をNIの観点から明らかにするものである。 最終年度として、国内での研究結果の発表にも比重を置く。今の段階では、8月の日本教育学会(札幌)で「Narrative Inquiryとの対話を通して見える日本の教育実践研究の意義と課題」と題して発表を行うことと、今年度末に刊行予定の編著に「ナラティブ・アプローチによる教育学の再構成」(仮題)として論文を執筆する予定が決まっている。その他のものも含めて資料を報告書に集約し、印刷する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に次の2点について旅費、人件費を中心に平成28年度の使用額に移行する必要が年度途中で予想されることになったため、平成27年度に予定していた支出の一部を学内の研究費で調整するなどし、次年度使用額に回した。 1.平成28年度の国際学会の出席が、予定していた1度から2度に増えることになった。これは、当初計画していた国際学会の発表を4月のAERA大会で行う予定であったが、本学の研究倫理規程の決定がAERAの応募締切りに間に合わなかったため、AERAでは調査のみ行い、国際学会の発表を6月のNarrative Matters2016で行うことになったためである。それに伴い、国際学会発表原稿のネイティブチェックなどの人件費も平成28年度に使用することとなった。 2.カナダ調査を先方の都合で2月に行うことになったため、資料整理が次年度にまたがることになり、英語データの文字化などの人件費支出も次年度に支出することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、上述のように基本的にカナダでの学会発表の旅費・参加費と、これまでの調査で収集した英語データの文字化に充てる予定である。
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