研究課題/領域番号 |
26381037
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研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
太田 健児 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (00331281)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モラルライック / エピステモロジー / 一般教養論 / デュルケーム / デュルケミアン / 統一学校運動 / ジャン・ゼイ |
研究実績の概要 |
モラルライックと教育制度との関連について、共和主義派と教権主義派との道徳的ヘゲモニーの争奪戦に決着がついておらず、紆余曲折があった点、モラルライック構築を担ったデュルケーム学派の研究者がその後の教育改革に加わっていた点、文系科目・理系科目間の拮抗問題が、文系科目の「一般教養化」をめぐる論争に転化されていった点などが解明あるいは再確認できている。モラルライックが科学教育で代用可能な点は、すでにデュルケームが指摘していたが、その後も教育現場では先の「一般教養教育」問題とセットになり、教育論争に拍車をかけていた点も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年目の計画は「エピステモロジーとモラルライック」の解明であったが、今年度新たに二つの発見があった。まずエピステモロジーの系譜について、純粋な哲学分野ではなく、E.デュルケーム以降の社会学分野の研究が大きく関連していたことが明らかになった点である。この点に着目されなかった理由は、デュルケーム以降の社会学史の詳細がこれまで社会学史分野でも扱われてこなかった点にある。唯一荻野昌弘(関西学院大学,日本社会学史学会)の研究があるのみで、それを土台に研究が蓄積されてこなかった。M.モース、G.ギュルヴィッチ、M.アルヴァックスら個別を扱う研究こそあれ、荻野が先鞭をつけたデュルケーム以降の論壇の「概要」を裏付ける「思想潮流の詳細」には着手されていない。本研究では、今回、デュルケミアンたちの研究の特色や各分野・各界への進出具合で幾つかの系譜があった点(社会運動論・活動、社会主義思想・活動)、反デュルケミアンとしてのフランス新カント主義の系譜、A.バイエによるエトロジーなどの系譜、そしてオーソドックスな講壇社会学の中での幾つかの系譜(ギュルヴィッチ、アルヴァックスなど社会学と社会主義との融合を目指した研究など)である。モラルライックについては、本研究がすでに解明した「自己修養論」の系譜側の隠然たる影響力があった点、科学論という独立したパラダイムがあったわけではなく、第三共和制以前から、コントなど実証主義に見られたように、生理学など当時のレベルでの自然科学の枠組みのアナロジーで人間や社会を分析していた結果、「理系・文系」渾然一体型の思考パターンが定着していた点が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
第3年目の研究計画は、「エピステモロジーの現在と社会思想史から再構成されたフランス教育史」の研究である。この二年間の研究成果を踏まえ、①第三共和制期後期の統一学校運動とエピステモロジー、モラルライックとの相関関係を解明するため、1920年代~1940年代までのモラルライックの各著作、各研究、論争のテキストを渉猟する。②当時の官報類を精査する。③ジャン・ゼイ研究のさらに推進する。
以上の作業を徹底することにより、当初の研究計画を達成する。
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