フランス第三共和制後期の教育制度の変遷は、第二次世界大戦後の教育改革まで、国民皆教育、教育の機会均等の実現など、右肩上がり的な歴史観によって説明されてきた。これ自体は正しいが、その間、政教分離の原則は紆余曲折しており、カトリックによる宗教教育とモラルサイエンスとの対立は継続していた。初等教育への宗教教育の復活の動きもあり、今日の日本の「教育勅語」復権問題に似た道徳教育論争があった。しかし、自然科学と宗教とは棲み分けしており、科学性や実証性が対立点ではなく、文系・理系ともそれらを共通の学問原理としていた。故に論点は別であり、エピステモロジーの詳細、一般教養観の解明が急務である点が確認された。
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