本年度は、札幌市の若者と文化政策についての現地調査とフランスのパリおよびトゥールーズの調査を実施し、さらにこれまで収集した資料および文献研究によって論文を作成した。 1)具体的内容:本年度は、最終年として補足調査をおこなった。具体的には札幌市の若者と文化政策についての現地調査とフランスのパリおよびトゥールーズの調査を実施した。そして、これまで収集した資料および文献研究によって論文を作成し、さらに研究成果のための論文作成準備をおこなった。2)意義①札幌市の調査についてはHBCジュニアオーケストラに関する資料収集を実施し、地域におけるジュニアオーケストラの役割を明らかにすることができた。②また、若者活動センターへの面談調査では、フランスの同様の地域の施設とは異なる特徴を把握することができ、経済的に恵まれない子どもや若者にとって文化的権利の保障と社会とのつながりがどのようにつくりだされようとしているのか、そこでの課題を明らかにするための資料の補足をすることができた。③フランス調査では、貧困地区のカリキュラムの具体的状況が明らかになり、また、文化の民主化の課題を実践レベルで明確にすることができた。3)重要性:本研究は音楽の大衆普及や余裕のある子どもたちのための情操教育としての音楽教育の現状を明らかにすることではなく、人間の基本的権利としての文化とは市民形成にとっての音楽の役割を明らかにするものである。これまでの研究をとおして、経済的に豊かでない地域にいる子どもたちや若者そして多様な国々にルーツをもつ子どもたちの住む地域での実践を国および自治体の政策と関連させつつ検討し、市民を文化的自立へと導くためのカリキュラムや教授方法などについて先進的な方法と課題を明らかにするための基本枠組みを再構築する視点を得ることができた。
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