研究課題/領域番号 |
26381044
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
太田 明 玉川大学, 文学部, 教授 (30261001)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ソクラテス的対話 / 哲学教育 / 批判的思考 / 子どものための哲学 / レオナルド・ネルゾン / ユネスコ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、哲学教育とそこで重要な役割を果たしている「ソクラテス的対話」の可能性を、(A)特にレオナルド・ネルゾン(1886-1927)が提唱した「ソクラティック・ダイアローグ」(SD)を中心にして、さらに(B)ユネスコの哲学教育の動向、および(C)SDの実践と含めて研究することである。
(A)について:ネルゾンに関しては、その哲学や思想は、SDを除いては、ほとんど忘れ去られているし、まして人物像はまったく知られていない。そこで、まずネルゾンの哲学・思想・行動の全体をつかむ必要があるとの判断に立って、今年度はネルゾンの人物像について研究した。比較的最近、ドイツで公刊されたネルゾン研究をもとにし、さらにネルゾンの同時代人の回想を参考にしながら、ネルゾンとはどのような人物なのかを年譜的に記述した。 (B)について:ユネスコが進めている哲学教育に関して、重要な宣言や行動計画などの概略をまとめた。連携研究者の協力を得て、ユネスコの文化政策全体のなかで哲学教育を埋め込んだ年表を作成した。また、ユネスコの報告書『哲学』(2007)にも強い影響を与えたP4Cの提唱者マシュー・リップマンの主著『探求の共同体―考えるための教室』の翻訳が出版されたのを期に、この「探求の共同体」という構想について検討した。 (C)について:Colloque International Education et Formation : En jeux pour le Developement Humainで、批判的思考とソクラテス的対話に関する発表を行うとともに、他の参加者と哲学教育に関して議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A)について:ネルゾンのが人物像については、これまでほとんど紹介や研究がなかったが、これについて概略をつかむことができた。特に、ネルゾンが忘却されている理由のひとつが彼の人柄と言動にあること、政治活動とヴァルケミューレ田園教育舎との関連については充分に理解することができた。また、これによってSDという哲学教育の方法がどのようなコンテクストで登場してきたかの一端が明らかになった。また、ネルゾンの評価には、SDだけではなく、彼の三巻本の主著『実践理性批判』の研究が不可欠であることが再認識された。 (B)について:ユネスコと哲学教育政策の動向について把握することができ、ユネスコ報告書『哲学』の分析の準備が整った。 (C)について:海外の研究者を招聘しての対話実践を予定したいたが、スケジュールなどの関係で、今年度は行うことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(A)について:今年度の成果を踏まえ、ヴァルケミューレ田園教育舎の教育、およびその基にあるネルゾンの実践哲学についての検討する。ネルゾンにおけるSDは大学での演習だけにとどまらず、ヴァルケミューレの成人学校での指導者教育と子どもの教育でも用いられた。この関連を充分に理解して研究を進める。また、現在のSD研究者、実践者を訪ね、SDの現在に関して調査を行う(ドイツ、イギリスを予定)。 (B)について:『哲学』の内容を分析する。特に、リップマンのP4Cやネルゾンのソクラテス的対話がユネスコの哲学教育の方向性とどのように関連しているのかを中心にする。 (C)について:Giovanni Pampanini氏(イタリア在住)を招き、地球時代におけるグローバリゼーションのもとでの文化的多様性と教育に関するワークショップを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークショプを開催し、海外からの研究者を招聘する予定であったが、スケジュール調整ができなかったたため、主に招聘に関わる費用が残額となったため、これを次年度使用額とすることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年9月に海外からの研究者を招聘し、ワークショプを開催する予定である。2014年度の年度使用額をこれに充てることととし、それ以外は当初の計画にもとづいて使用する
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