本研究の目的は美による国民形成と道徳再建の可能性を、美を重んじる中国教育史を踏まえて改めて追究するところにある。 中国は清末以後の近代化に伴い、美および美育による国民道徳向上の思想とその実践があった。本研究は、20世紀初頭に「美育救国」を提出した元北京大学総長蔡元培の理論と実践にあてて、美の理念とその教育のあり方をいかに社会全体に浸透させたのかを明らかにした。一方、「美育救国」という方針の下で、当時多くの留学生が芸術を学ぶために日本にやってきた。日本で学んだ留学生たちの実態、そして彼らが帰国後の教育活動を通して、中国近代芸術教育の構築に貢献した留学生たちの姿を浮き彫りにすることができた。
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