研究課題/領域番号 |
26381052
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
井ノ口 淳三 追手門学院大学, 国際教養学部, 教授 (00106014)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コメニウス / 世界図絵 / 異版本 / パンソフィア |
研究実績の概要 |
これまでに引き続き、コメニウス(J.A.Comenius,1592~1670)のPansophia(汎知)の理念の内容を解明することを目的として研究を行った。そして、継続して取り組んできたコメニウスの『世界図絵』異版本の研究をまとめ、追手門学院大学出版会の助成を得て刊行した。『世界図絵』は、従来「世界最初の挿絵入り教科書」として知られてきたが、そればかりではなく、実は「世界最初のさわって動かせることのできる教材」でもあることを本書において明らかにした。このことについては2017年5月31日に放映のNHKテレビ番組「探検バクモン」でも模型を使用して一般の視聴者にもわかりやすく解説をしている。 また、本書をまとめる過程でコメニウス研究の成果を確認しておく必要を感じたので、それを「コメニウス研究50年の到達点と今後の課題」としてまとめ、『追手門学院大学教職課程年報』に掲載した。そしてチェコにおけるコメニウスゆかりの土地を訪ねる活動について「チェコのコメニウス教育博物館」として整理し、『Musa博物館学芸員課程年報』に収録した。 さらに、コメニウスのPansophiaの理念の研究とかかわって「教養教育」についての考察を行い、「教師教育と教養教育」としてまとめた。これは、日本教師教育学会編『教師教育研究ハンドブック』(学文社)に収録され、2017年9月に刊行される。 以上の他には「いじめ問題とどう向き合ってきたか」について日本教育方法学会紀要『教育方法学研究』に執筆した他、関西チェコ/スロバキア協会主催の会合で「コメニウスと歩くチェコとスロヴァキア」と題して講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初は、ロシアおよびチェコで行われる国際学会に参加する予定であったが、いずれも授業期間中の開催であったので、出席を控えた。それに代えてチェコとポーランドに出張し、研究者と面談したり、文献調査を行ったりした。また、コメニウスにゆかりのある場所の中で、これまで訪ねることのできていなかった土地を訪問し、当時の状況を推察した。とりわけ有益であったのは、ポーランドのレシュノにおける調査である。今回の調査では、コメニウスが当時滞在していた場所を確認することができた他、コメニウス名称の学校が2つ存在し、現在もコメニウスの業績を称賛していることがよく理解できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も海外への発信を重視し、国際学会への参加や海外の研究者とのワークショップなど交流を深めたい。それと共に今年度は4年計画の最終年度にあたるので、これまでの研究をまとめることも課題となる。 コメニウスは、その生年月日についての説明には異論がないのに、生誕地が未だに確定されていない人である。このため内外の研究書では諸説が混在している。そして日本ではまとまった伝記本も出版されていない。このような状況に鑑みて、今後もコメニウスにゆかりのある土地を訪ねて資料を収集すると共に、それぞれの場所についての歴史や文化に関する考察を深め、多面的なコメニウス像の構築に努めていきたい。
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