研究実績の概要 |
最終年度はアメリカ最初の幼稚園(ウィスコンシン州)を調査し、シュルツ(Margarethe Meyer Schurz,1832-1876)によってドイツから導入された初期幼稚園の実態を明らかにする試みを行った。シュルツによって開設されたドイツ語幼稚園は、その後ピーボディ(Elizabeth Palmer Peabody,1804-1894)によって英語幼稚園として広められ、新教育運動の中に取り込まれていこくとになるが、アメリカの幼稚園教育が明治期・大正期を通じて直接的にも間接的にも日本の幼稚園教育に強い影響を与えたことから、アメリカに最初に導入された幼稚園の実態を知ることは必須のことであった。 最終年度の研究のまとめを、研究分担者のそれぞれの課題に沿って以下に概略を記す。「教員養成・養成課程」(甲斐)では、物理的制限の中で収集できた保育者養成校カリキュラムが一部にとどまったが、それらの断片をつなぎ日本のミッション系師範学校のカリキュラムと比較考察を行った。「保育者の役割」(オムリ)では、保育者の資質として「母性」など女性としての特質が求められたこと、専門性として幼稚園教師が資格化されたことにより従来までの幼児学校教師養成よりも理論的・実践的専門性が求められるようになったことが明らかになった。また今後、保育者が子どもの作品をどのように取り扱ったのかを詳細に文献調査することによって、欧米日の子ども観や保育観の差異が明らかになるであろうことが示唆された。「保育内容」(山田)では、第3恩物の「生活の形式」からヒル(Patty Smith Hill,1868-1946)のコンダクトカリキュラムを経て、「ごっこ遊び」として日本にもたらされたことが明らかにされた。「教材」(大森)では、フレーベル以来の「折り紙」が導入各国においてどのように受容・変化させられてきたのかが明らかにされた。
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