研究課題/領域番号 |
26381055
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
矢野 裕俊 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (80182393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育目標 / アセスメント / 学力テスト / チャータースクール / 学習成果 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、本研究課題の2年次であり、2回の研究会を開催するとともに、国外調査を実施した。研究会では、研究協力者に参加を呼びかけ、スウェーデン、フランス、オランダにおける国レベルのアセスメント体制の近年の変化の特徴を把握するとともに、その中で学校教育がいかに学校独自の教育を存続・維持させているのかという問題について、新しい状況を知ることができた。特にオランダにおいては、公教育システムの中にオルタナティブな教育を明確に位置づけ、テストによるアセスメントと学校評価の国家的な仕組みを導入しつつも、それを公教育システムの均一化へと至らしめていない点匂いて注目すべきケースであることが分かった。 国外調査としては、アメリカ合衆国のチャータースクールの現状を調査すべく、ルイジアナ州ニューオーリンズとミネソタ州ミネアポリス地域のチャータースクールを訪問し、それぞれの州において強まっている学力テストによるアセスメント体制の中で、学校独自の教育目標の設定がどのように維持されているのかを調査した。訪問した4校のチャータースクールはいずれも成功した学校の例と見ることができるが、いずれにおいても、学校の存続に関わる学校のミッション(教育目標)と、学校評価の中核をなす州学力テストの結果とに適度に折り合いをつけるという点で共通した特徴が見られた。また、オランダの調査では、ピースフル・スクールとモンテッソーリ式の小学校、イエナプランの小学校を訪問し、それぞれの学校の教育の独自性が、ナショナルなアセスメントが導入される一方で、しっかりと根付いていることを確認することができた。そうした学校独自の教育の自由がどのようにアセスメントや学校評価の上に成り立っているのかを解明することが新たな研究関心として生まれてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題への取り組みは全般的にやや遅れ気味であるが、それは主として国外調査の具体的計画を立てることに手間取ったことによる。また、研究代表者が研究分担者として関わっていた別の研究課題の研究成果を編著の形にして公刊することに注力したため、年度当初に考えていたほどには、本研究課題の研究の遂行に十分な時間と労力をかけられなかったことも影響している。 しかしながら、2度の国外調査と研究会の開催により、研究ネットワークを広げることができ、本研究課題に関わる諸外国の動向について最新の情報が得られたことに加えて、今後の研究のための資料収集をかなり進めることができた。そうした資料の分析を最終年次に進めることにより、当初に考えていた研究目的の達成は可能だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで2カ年にわたって進めてきた本研究課題への取り組みがやや遅れ気味であることを踏まえ、最終年次にあたる本年度には、研究の加速化を図り、年度前半から半ばにかけて重点的に研究活動を推進することとする。年度後半には、研究成果のまとめに注力する。 具体的には、①年度前半のうちにこれまでに収集した研究資料の整理・分析を急ぎ、最終的な研究成果の見通しを立てる、②国外調査を早期に計画し、本年度の比較的早い時期に実施することにより、本研究課題に関わる資料の豊富化とその整理・分析を図る、③研究成果の一端を今年度に開かれる教育関連学会の年次大会において発表する、④学術雑誌に研究成果の一端を論文の形で投稿する、⑤最終的な研究成果を何らかの形で社会に発信すべく、その方法を検討する、という5点にまとめられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題について交付申請時に予定していた国外調査の規模を研究の初年次及び第2年次には、訪問先の事情及び研究代表者のエフォート上の制約のためにやや縮小せざるをえず、また国外調査には研究協力者の同行を予定していたが、それが実現しなかったことが次年度使用額を生じた大きな理由である。また、収集した研究資料の整理を補助してもらうためのアルバイト謝金を当初見込んでいたほどに使用することができなかったため、謝金の使用額も当初の予定との間に隔たりが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年次にあたる平成28年度は、国外調査の計画を早期に具体化することにより、次年度使用額の大半を使用する予定である。同時に、研究資料の追加的購入、研究資料収集と整理のための研究補助業務を円滑に進めるために、本研究課題に使用する情報機器を物品費として購入するとともに、年度の早い時期から安定的にアルバイトを依頼し、そのための謝金にも使用することを計画している。
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