研究実績の概要 |
平成28年度には、新たに研究分担者2名に加わってもらい研究の幅を広げた。 最終年度の研究成果は、まず第1に初等中等教育カリキュラムの国際的なモデルとしての国際バカロレアの3つのプログラム(MYP, PYP, DP)に注目し、学習成果を「10の学習者像」として明示し、そうした学習者を育てるプログラムにおける目標設定とアセスメントの関係という点から整理したことである。中でもDPにおいては試験が実施されるが、それも国際バカロレア機構が実施機関となって行う統一的な試験とともに、学校ごとに行われる学校別試験とが併用されており、統一的な試験によっては把握することが困難な学習成果の評価にも注意が払われ、その部分は学校ベースで行われている。そうした学校ベースの評価は国際バカロレア機構によって行われる定期的な監査によって、その妥当性が担保される仕組みが作られている。 第2に国外・国内のパフォーマンス評価に関する動向に注目し、それが教育実践の様々な面に及ぼす影響を探るとともに、1つの教育システムにおけるアセスメント体制のあり方も大きな転換点に直面していることを明らかにしたことである。それに関連して、国外調査としてWALS(世界授業研究学会)2017年次大会に参加し、授業研究においても、パフォーマンス評価の視点や各国のアセスメント体制のあり方との関連で教室の授業を捉えるという方向性を確認することができた。また、オランダのイエナプランの学校を訪問し、国レベルのアセスメント体制(学力テストや学校評価の実施など)との折り合いをつけることで、学校独自の教育実践の特色を維持する実例を確認した。 研究期間全体を通じて、学習成果に基づく教育目標の設定という国際的な趨勢の中で、学校の独自性を損なわず教育目標の達成状況を国家的なアセスメント体制で評価するための工夫が模索されていることがわかった。
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