保育制度の大きな転換期にあり、保育の質の向上に対応する上で高度な資質と専門性を有する保育者の養成は喫緊の重要課題である。本研究は保育者の専門性の中でも特に感情に関する実践的知識・能力に焦点を当て、より具体的には対人援助職の専門性である「感情リテラシー」の探究とそのためのプログラム開発のための研究を実施してきた。 この目的のため、平成28年度は、前年度までの調査研究に基づき、主に次の3つの研究等を実施した。1つ目は、地域子育て支援における保育者養成校の学生及び保育者の困難感にについて調査結果を論文化した。2つ目は、保護者支援における保育者の感情リテラシーについて自主シンポジウムで議論を深めた。3つ目は、現職の保育者対象に、研修や保育雑誌を通して保育者の感情やメンタルヘルスに関する講義・演習や特集記事の監修を行った。 以上に基づく、平成28年度の主な研究成果は次の1~3である。1.研究論文の発表 (1)「地域子育て支援における支援者の困難感とその対処」(乳幼児教育学研究,第25巻)、(2) 「保育者養成課程の地域子育て支援実習における学生の困難感」(千葉大学教育学部研究紀要,第65巻)。 2.学会でのシンポジウムの開催:日本乳幼児教育学会第26回大会において自主シンポジウム「保護者支援における実践者の感情リテラシーの育成」。 3.保育雑誌での特集記事の執筆・監修:『保育ナビ』(2016年12月号)にて「特集:保育者が育つ、育ち合う職場づくり」」。なおこの特集記事の知見を活かし、石川県社会福祉協議会主催の研修会にて「保育における『機嫌のよい』人間関係づくり」と題して講義・演習を実施した。 さらに、本研究を基にして、本研究の研究実績を活かした、保育者のストレス(感情、メンタルヘルス)への対応に関する図書の出版も決定し、執筆が進められている。
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