本研究は、植民地期朝鮮における「夜学」経験者のオーラル・ヒストリーを通して、文献資料を中心に行われてきた従来の研究手法では明らかにできなかった当時の不就学者のための教育または朝鮮民衆による自主的な教育活動の実状とその特徴を究明し、植民地期朝鮮の教育をより多角的に描くことを目的としている。 3年目の平成28年度は、前年度に引き続き、植民地期に夜学や講習所に通った経験を持つ人々にインタビューを行い続けるとともに、前年度から取り組んだ植民地期朝鮮の夜学における女性の学びに関する考察を論文としてまとめた。 一方、夜学教師にも注目し、当時の夜学教師の時代認識や教育哲学、教育内容等から植民地期夜学の特質を考察した。従来の研究では夜学教師に関してはあまり研究されておらず、その実態が明らかにされていない。すなわち、夜学教師の多くは地方有志や青年であったといわれているが、実際彼らがなぜ夜学で教えるようになったのか、夜学教育で何を重視していたのか、そのためにどのような工夫をしていたのか、生徒たちとの関係はどうだったのかなどの具体的な活動や教育観について検討した研究は管見の限り皆無である。そこで、平成28年度は主に植民地期夜学教師を経験した人あるいはその生徒だった人たちの語りから当時の夜学教師について考察し、その実態と特質を検討した。
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