平成28年度の研究内容は以下のとおりである。 (1) 女性関連施設に関する論考・実践報告の収集 国の社会教育・婦人教育政策の展開と先行研究の動向をふまえ、女性関連施設に関する論考・実践報告を網羅的に収集した。『国立女性教育会館研究ジャーナル』、『NWEC実践研究』、『女性施設ジャーナル』等全国的な発表媒体、『We Learn』(日本女性学習財団)、『女たちの21世紀』(アジア女性資料センター)等女性関連施設が発行する継続的出版物、女性団体が発行したミニコミ誌の一部も対象とした。
(2)ソウル市におけるジェンダー平等学習の考察 ソウル市は2007年~2010年の4年間にわたり、「女性にやさしい都市(まち)」を掲げ、女性が幸せで住みたくなるようなまちづくりを進める「女幸プロジェクト」を実施した。女性の視点と経験をもとに、女性が都市生活で遭遇する不便や不安、不快感を取り除き、女性の権利向上、生活改善を政策化するため、1)女性政策の拡大、2)法律・制度のジェンダー平等化、3)都市生活における不平等の解消、の3つの柱を内容とする。このプロジェクトの最大の特徴は、政策決定の具体的なプロセスにおいて、ソウル市のあらゆる部署の女性職員が横断的に関与するとともに、「女幸同伴者」と呼ばれる市民の代表(NGOや学識経験者、女性団体等)、さらに「女幸プロシューマー」(生産者かつ消費者の意)と呼ばれる一般女性(主婦、会社員、学生等)総勢200名がボランティアで参画した点である。男女共同参画社会を「女性にやさしい都市」として具体的な達成目標とし、かつその達成までのプロセスにおいて女性の参画を促進したという意味で高く評価される実践事例であり、本研究で取り上げた福井市の社会教育実践・まちづくり活動の比較・考察を行った。またジェンダー平等に寄与する学習施設として、ソウル女性プラザ他の視察を行った。
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