本研究は、近年の米国において展開される急進的・強権的な教育行政改革について検討・考察したものである。米国では特に都市部で、学力低迷等で教員や学校への批判が募る。従来の教育委員会制度の信頼性が低下し、これまで抑制されてきた市長の教育への権限が優越すると同時に、教員や学校に厳しい評価・制裁等の施策が展開されてきた。日本でも同様の事態が生じている。検討・考察の結果、現世代ではなく未来世代への責任を重視する規範理論構築の必要性や、教員・学校よりむしろ社会に働きかける施策の検証、「地域教育政治圏」の理論的模索、中央教育行政におけるいっそうの構造的困難・教育委員会制度の存在意義への逆照射等を指摘した。
|