研究課題/領域番号 |
26381076
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
藤田 美佳 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (90449364)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結婚移住女性 / 結婚移民者 / 韓国語教育 / 隠れたカリキュラム / 人権 / エンパワメント / 言語習得 / 社会参加 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目的である、韓国の民間組織「移住女性人権センター」が作成した、結婚移住女性のエンパワメントにつながる韓国語教材『人権を主題に学ぶ韓国語』の全容を明らかにするために、成立背景、企画意図、実践上の課題や展開等について、同センター代表、プログラムオフィサーに対するインタビューを実施した。 そして、その結果を基に、政府女性家族部や国立国語院が作成した『女性結婚移民者と共に行う韓国語(1~6巻)』における人権の課題について分析した。 その上で、女性家族部所管の結婚移住女性支援機関「多文化家族支援センター」においてフィールドワークおよびセンター長、指導者、学習者へのインタビューを行い、「移住女性人権センター」の実践との比較検討を試みた。 それらの成果を「結婚移住女性に対する韓国語教育の課題ー『多文化』か『同化』か」(東京・沖縄・東アジア社会教育研究会紀要『東アジア社会教育研究』19号)にまとめた。 さらに国立国語院の教材分析を継続し、米国の移民・難民に対する第二言語としての英語教育(ESL:English as a Second Language)の課題との共通性を見出し、比較検討の結果、結婚移住女性向けの韓国語教育においては、家父長制、ジェンダー、同化等の隠れたカリキュラムの問題があることを指摘した。そして成果の一部を日本社会教育学会・韓国平生教育学会合同「日韓学術交流研究大会」において発表した。 一方、『人権を主題に学ぶ韓国語』は現在、同センターでの韓国語講座での指導書としては使用されていないことを確認し、その発展型として実践されている活動家養成プログラムにおける参与観察を行った。さらに、教材分析を行うと共に、教材作成者に対するインタビューを実施し、『人権を主題に学ぶ韓国語』の潜在的課題について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
韓国移住女性人権センターが作成した韓国語教材『人権を主題に学ぶ韓国語』の成立に影響を及ぼした政府女性家族部、国立国語院の教材分析を中心に取り組み、成立背景、結婚移住女性に対する韓国語教育の課題を、人権、家父長制、性別役割分業(ジェンダーロール)、同化の側面から明らかにできた。 研究成果の一部を論文、発表(発表後、論文化に取り組み中で、今年度内に投稿予定である)した。 研究アドバイザー(国外・海外)、海外共同研究者、研究協力者との連絡、打ち合わせを密に行い、順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、韓国国立国語院『女性結婚移民者と共に行う韓国語(1~6巻)』の隠れたカリキュラムの分析を行い、『人権を主題に学ぶ韓国語』の意義と可能性を明らかにする。 また、本年度は『人権を主題に学ぶ韓国語』の教材分析を行う。そして、日本において、結婚移住女性(国際結婚)、外国人女性に対する言語習得支援を行う地域日本語教室ボランティア等に対して、移住女性に対する言語教育の潜在的な課題も含め、エンパワメントと社会参加のための言語習得支援についての理解を促すために日本語翻訳版を整備する。 平成26年度計画に掲げた『人権を主題に学ぶ韓国語』の製作者に対するインタビューは実施済みだが、監修者である研究者へのインタビューは未着手であるため、27年度に実施し、『人権を主題に学ぶ韓国語』の学術的な意義を把握する。 なお、移住女性人権センターの実践、教材分析に関する先行研究の検討は継続して行う。 引き続き、今年度も移住女性人権センターの事業の分析を行うため、参与観察に取り組み、海外共同研究者・研究協力者との研究会を設け、多面的・多角的な考察を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
9円が端数となり、同額単独での使用が困難なため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入の際に組み込んで使用予定である。
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