本研究では、結婚移住女性の社会参加とエンパワメントにつながる第二言語識字教育について実証的に研究するため、 1.韓国の民間組織「移住女性人権センター」が作成した教材『人権を主題に学ぶ韓国語』を対象に、批判的教育学の観点から教材分析を行った。また教材作成に至る背景的な要因・企画意図・実践上の課題や展開について、センター代表・プログラムオフィサー・教材監修者および作成担当者に対するインタビュー調査を行い、結婚移住女性が自身の身を守るための人権や社会参加につながる市民権について学ぶ機会が限定的であることを確認した。さらに、『人権を...』の実践的な展開である「移住女性活動家養成研修プログラム」の参与観察およびインタビュー調査を含む質的研究によって、教材の意義について多角的に分析し、結婚移住女性のエンパワメントを支える実践の成果と課題を明らかにした。 2.『人権を主題に学ぶ韓国語』の意義を多面的に考察するため、政府女性家族部と国立国語院が作成した『女性結婚移民者と共に行う韓国語(1~6巻)』との比較分析を行った。そして、全国で200個所以上開設されている「多文化家族支援センター」の多くで採用されている『女性結婚移民者と共に行う韓国語』において、韓国文化への同化を迫る内容や、家父長制の影響、ジェンダー的な課題など「隠れたカリキュラム」が存在することを解明し、「社会適応教育としての韓国語」(多文化家族支援法第6条)の問題性を指摘した。 3.最終年度は、上記の研究成果を踏まえ、国家人権委員会への訪問調査を実施し、移住女性の人権課題について討議した。 4.フィールドに対する研究成果の還元として、『人権を主題に学ぶ韓国語』日本語訳版の提供、研究成果の報告、定例学習会において、日本の移住女性支援の現況と課題について報告した。 5.日本社会教育学会年報60集に「参加型研究における研究者の役割」を投稿した。
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