研究課題/領域番号 |
26381078
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
五島 朋子 鳥取大学, 地域学部附属芸術文化センター, 教授 (80403369)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地域劇場 / アートマネジメント / 人材育成 / 公共劇場 / ソーシャリー・エンゲイジド / 地域課題対応 |
研究実績の概要 |
昨年度の予備調査を踏まえ、今年度は国内の文化施設の中から、特に立地する地域の様々な組織と連携しながら、ユニークな自主事業を展開する複数の小規模施設に焦点をあて、事業の企画運営プロセス、事業を担うスタッフのキャリアと能力等について、事業への参与観察、スタッフや関係者へのインタビューをもとに検討した。文化施設の「公共性」についてスタッフが強い問題意識を抱いていること、同時に、手元にある限られた資源(人的ネットワーク、活動状況の把握、資金、情報など)に着目しつつ、領域を超えてこれらの接点をたくみにすりあわせて行くような即興性と柔軟性を発揮していることが、地域課題対応型事業の段階的な発展につながっていることが示唆された。 このような事業を行う文化施設に対する評価を、来場者および住民の視点から探るため、質問紙調査を実施し、2施設の来場者(約1,100件)、住民(約1,300件)の回答を得て分析を進めている。現在のところ、地域課題対応型の事業は、地域住民にも来場者にも文化施設の事業としてなかなか認識されていないこと、またそもそも社会的役割と考えられていないこと、しかし、子どもを対象とする事業については一定の評価があることが確認できる。 また、海外の地域劇場での事例調査では、非営利組織が運営するアメリカのリージョナルシアターを複数訪問し、聞き取りと参与観察を行った。「多様性」をキーワードとするアメリカのリージョナルシアターでは、地域コミュニティのマイノリティや劇場支援者らの意向を反映した、様々な「課題対応」的な事業が実施されてはいるものの、資金調達の手段、将来観客の開拓のための事業という側面も強く、質的な変化を促す事業が行われているとは言い難い。これら劇場スタッフに対する専門性の意識調査については、以上の予備調査を踏まえ、ウエッブによる調査を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は、具体的な地域課題を反映しながら、自主事業を継続的に実施している3つの劇場を実践例として抽出し検討することができた。それぞれ運営母体や立地地域の特色は異なるが、昨年度の予備調査から、創造活動を何らか担っている劇場で、自治体直営・三股町文化会館(宮崎県)、NPO運営・施設は行政所有である鳥の劇場(鳥取市)、NPO法人が民間施設を拠点とするKAIKA(京都市)の3カ所であり、そのうち、鳥取と京都の事例では、来場者調査をもとに、地域課題対応型事業を含めて劇場に対する評価を明らかにできた。アメリカのリージョナルシアターにおけるスタッフの専門性調査については、準備に時間を要したため、来年度実施することとなったが、劇場内に調査実施の協力者を得たうえでの実施が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、これまでの地域課題対応型事業の展開状況の把握、劇場スタッフの意識調査の比較検討、来場者と住民に対するアンケート調査を踏まえ、今後の地域課題対応型事業の可能性を検討し、そこから日本の日本の地域におけるソーシャリー・エンゲイジド・シアター像をいくつか提示したい。また、それを担うアートマネジメント人材像と地域志向の教育・研修プログラム・モデルを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカのリージョナルシアターにおけるスタッフの専門性意識調査を、ウェッブで実施することとなり、印刷配布の経費が不要となったこと。
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次年度使用額の使用計画 |
ウェッブでの調査項目作成に必要な人件費として使用する。
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