本研究は、研究者が用いる質的アプローチ(KJ法とTEM)を援用し、保育者相互の対話を促すツールとして保育カンファレンスに用いることで、保育者の省察や子ども理解に何をもたらすのかを検討した。具体的には、質的アプローチを用いた保育カンファレンスを実施し、保育者にインタビューを行った。結果は次の通りである。(1)KJ法の使用は、多様な意見の創出、発言機会の保証、発言に対する不安軽減に寄与した。(2)TEMの使用は、多角的な子ども理解、保育中の微細行動への着目、「もしも」の場面の想像に寄与した。以上より、質的アプローチの援用は、保育者の多声的な知の交流や実践的知識の形成に有益であることが示唆された。
|