平成29年度は当初の計画どおり、日独両国の生徒の学校づくりへの参加の実態、意義、機能に関する比較研究を行うとともに、意義および機能のカテゴリーを整理したマップを作成するという本研究の第三の課題に取り組みながら、引き続き、ドイツにおける生徒の学校づくりへの参加の実態を把握した上で、その意義および機能を分析するという本研究の第一の課題、日本における生徒の学校づくりへの参加の実態を把握した上で、その意義および機能を分析するという本研究の第二の課題に取り組んだ。 その成果として次の点が挙げられる。第三の課題の結論として、生徒の学校づくりへの参加に関するマップについて述べると、日独両国の生徒の学校づくりへの参加は「権利としての生徒参加」および「教育としての生徒参加」という2つの観点から捉えることができ、両国での各学校段階における取り組みは、その体系化や具体的な実践方法の点で構造的に大きく異なっている。 第一の課題に関連づけて言えば、ドイツにおける取り組みの特色として、1970年代以来の生徒参加の制度を受け継ぎ、「権利としての生徒参加」を確固としたベースとしながら、2000年代以降に進展してきた民主主義教育により、初等教育段階、中等教育段階Ⅰ、中等教育段階Ⅱの各段階において体系化された「教育としての生徒参加」が進展しているという構造が明らかとなった。 他方、第二の課題に関連づけて言えば、日本における取り組みの特色として、高等学校での新しい教科「公共」の導入準備が進む中で、シティズンシップ教育や主権者教育としての生徒参加の取り組みが拡大しつつある。日本においては「権利としての生徒参加」はほとんど想定されておらず、各学校段階での明確な体系化も見られないが、18歳選挙権時代を迎えたことで、高等学校を中心とした「教育としての生徒参加」が進展し始めているという構造が明らかとなった。
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