研究課題/領域番号 |
26381089
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
背戸 博史 琉球大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50305215)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 子育て支援 / 孤立化 / 子育てサロン / 地域社会 / 次世代育成 / 生涯学習 |
研究実績の概要 |
我が国における子育て環境は3つの意味において孤立化している。第1に核家族化や都市化の進行において、第2に養育者の関心の低さにおいて、第3はむしろその関心の高さにおいてである。要因の異なる3つの孤立化は、しかし、その根底に地域社会の不在がある点で共通しており、本研究では、子育て支援行政の総合化が進行するなかで、地域社会の形成に向けた生涯学習施策が如何なる責任を負い次元の異なる3つの孤立化を是正し得るのか、その理論と手法の新たな戦略を究明することを目的とした。 この目的に対し平成26年度は①子育て環境の実態に関する理論分析②子育て支援施策の総合化に関する理論分析③生涯学習施策および子育て支援施策の動態分析の3観点から研究を進めた。①に関しては「子ども・子育て白書」や「全国自治体の子育て支援施策に関する調査」などを中心に分析を進め実態把握に努めた。②に関しては「次世代育成支援対策推進法」を契機とする自治体の子ども・子育て支援施策について、とりわけ札幌市の取り組みに注目して考究し、③として札幌市の訪問調査を行った。 札幌市における特筆すべき取り組みの第一は「子育て支援宣言」である。個人単位や企業・組織単位でなされる「子育て支援宣言」は、子育て環境の地域化・社会化を促す取り組みとして注目される。第二の点は地域と行政の協働による子育てサロンの開設であり、子育て支援サービスを生活圏内に配置するとともに世代間交流を促し孤立化を阻止する仕組みとして注目される。第三は次世代育成支援事業として、小中学校の授業のなかで児童が新生児(とその親)と交流する機会を創出している点である。長期ビジョンではあるが、開かれた子育て環境の醸成に向けた卓越した取り組みとして着目されるのである。 以上、平成26年は上記の取り組みを中心に研究をすすめ、学会発表や論文執筆においてその成果の一部を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において初年度は子育て環境の実態把握と子育て支援施策の概況の理解を計画しており、それに関しては一定の成果を得ることができた。また、子育て支援施策の新しい在り方として行政や市民によるファンドの設立とNPOを中心とする活動団体への資金援助という手法にも着目することができ、計画以上の成果も収めた。 ただし、動態把握として実施した自治体調査に関しては、札幌市を事例として選定し2度の調査を実施し新たな知見を得たものの、卓越した子育て支援施策の背後に行政による生涯学習施策との明らかな連関を見て取ることはできなかった。さらなる追加調査として、地域単位で子育てサロンを開設する際の主体である自治会や地区民生委員児童委員協議会、地区社会福祉協議会、地区連合会といった地縁団体、あるいはNPOやボランティア団体、市民サークルといった活動主体に対し追加調査を実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は当初の計画通り①子育て環境の実態に関する理論分析②子育て支援施策の総合化に関する理論分析の精緻化に努めるとともに、③生涯学習施策および子育て支援施策の動態分析に力点を置き研究を進めたい。 まず、上記したように、平成26年度に実施した札幌調査の追加調査を行う。その際は市内175箇所ほどある子育てサロンを類型化しそれぞれのタイプを訪問するとともに、その運営主体に対し活動目的や活動スキル、研修方法やまちづくり・地域づくりとの関連等について訪問調査を行う。 また、当初計画において着目した事例(たとば舞鶴市、埼玉県、揖斐川町、茨城県、秩父市、東海市等)を再検討し訪問先を選定し、多様な動態について考究することで本研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に行った出張の旅費計算が年度末のため遅延し、正確な残金が確認できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
必要な物品(書籍等)の購入に充てる。
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