研究課題/領域番号 |
26381094
|
研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
大高 研道 聖学院大学, 政治経済学部, 教授 (00364323)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 社会教育 / 社会的企業 / 生活困窮者自立支援 / 中間的就労 / ワーカーズコープ / 協同労働 / エンパワメント / 社会的排除 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、生活困窮者自立促進支援モデル事業を実施している自治体、支援実施団体、当事者へのヒアリング調査を実施した。 京丹後市(京都府)を対象とした自治体調査では、生活福祉課、市民課(多重債務相談・支援室、市民相談室)、商工振興課(消費生活センター)をまとめた「寄り添い支援総合サポートセンター」を設置し、各相談支援の担当課を横断できる支援体制を構築している取り組みの検討を通して、「相談事業」から見えてくる複合的な課題に対してさまざまな地域資源と結び付ける行政の役割と可能性を明らかにすることができた。 その一方で、当事者ヒアリングを通して、相談者が抱える困難は多様であり、一元的な支援では限界があることも明らかにされている。とくに、相談者の多くがその日の生活に窮している状況に鑑みると、就職にむけた支援が中心になっているのが実態であるが、単なる就職への移行支援だけでなく、個々の適性や能力を確認し、伸ばしていくための学びの機会へのニーズは高く、職業訓練や体験的な職場など、技能習得のみならず社会復帰への段階的な支援の必要性が支援者・当事者の双方から指摘されている。 本研究が主たる対象とする「中間的就労」の機能も、このような困難を抱えている当事者を中心に据えた支援を意識し、社会的な居場所、体験的な訓練・就労を包含した多様な働き方を実現する地域的支援システムの構築をベースとして構想する必要があろう。そのためには、当事者と支援者の双方向的支援ネットワーク形成とともに、当事者同士の自律的なピアサポート体制など、多様な支援チャンネル構築に向けた検討も残された課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活困窮者自立促進支援モデル事業の概要と各自治体における就労支援への基本的スタンスの確認・検討をもとに、2015年度から本格的にスタートする生活困窮者自立支援制度にとりくむ自治体と社会的企業調査の基本的な調査枠組および論点は、一定程度整理することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
依然として自立支援や就労支援につながっていない多くの人びとの存在が指摘されるなかで、支援のあり方のみならず、「支援につなげる支援」の重要性が前年度の調査を通して明らかになった。これまでの研究は「排除に至るまでの過程」に焦点化しがちであったが、「就労支援に至るまで(リカバリー)の過程」に着目し、当事者視点を重視した支援のあり方の検討枠組み構築にむけた包括的な調査研究活動に取り組みたいと考えている。 具体的には、多様な働き方を許容する「居場所としての職場」を地域相互支援ネットワークの形成を通して実現するなかで、生活困窮者、支援者、地域住民がともに働く場と支援・被支援の関係を超えた地域包括的支援の枠組み構築に向けた先進事例の調査が主たる研究課題となる。 同時に、2015年にスタートする生活困窮者自立支援制度では、自立相談支援事業は必須事業であるが、その延長線上にある就労準備支援事業、就労訓練事業の推進事業、家計相談支援事業、学習支援事業、一時生活支援事業など、就労支援の連続性と継続性を担保しつつ、「人間らしい働き方」を実現するための仕組みの検討は喫緊の課題となっている。新制度下における、中間的就労事業(就労訓練事業)の自治体での実施状況については、引き続きその実態把握に努めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2015年3月に予定していた中間総括および今後の研究計画ミーティングを、連携研究者との日程調整の末、5月に変更したため、その旅費等に該当する費用を次年度に繰り越すことにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
事例検討ミーティングおよび調査旅費にあてる。
|