研究実績の概要 |
本研究は、幼児が遊びのなかで生み出す「自発的な音表現・歌唱」へ焦点をあて、総合的で、創造的な音楽活動における新たなプログラムを構築することを目的としてきた。 平成26年度はこの目的に照らして、歴史研究とフィールド研究を行った。平成27年度は、平成26年度の研究で得られた知見をもとに、さらなる歴史研究とフィールド研究を推し進めた。歴史研究からは、子どもが自由に音を探求することの重要性が浮かび上がってきた。フィールド研究からは、幼児の主体的な表現を引き出す楽器あそびにおいて、タンブリンという楽器の可能性について知見を得ることができた。 そこで、平成28年度は自由遊びのなかで、楽器を用いた音楽的コミュニケーションを通して、合奏ごっこへと音楽コミュニティを即興的に生成していく過程を事例として取り上げ、幼児自身が考えや感情を他児に伝えること、互いの意見を受け止めあうことの重要性や、互いの音を聴き合うことによって、自己肯定感を高める機会となっていたこと、幼児たちが即興的に音楽をつくり合うことのできる環境の重要性、さらに、こうした環境設定をする保育者の専門性が何より重要であることを明らかにした。 これらの研究は、オランダで行われた、Early Childhood Music Education Commission (ECME), 17th International Seminar と、スコットランドで行われた、32nd ISME World Conference 2016において発表し、International Journal of Creativity in Music Education Vol.5に論文として掲載された。
|