平成28年度までに行った研究成果のうち、エンパワメントプログラムワークショップ参加者の意識の変化について質問紙調査の結果をまとめ、日本乳幼児教育学会(平成29年11月12日西南学院大学)において発表した。プログラム参加者のうち、プレテストとポストテスト両方のデータが取れたのは15名であった。効果測定のための質問紙22項目のうち、有意差のあった項目は6項目であった。意識の上昇がみられた項目は、保育への主体的な取り組み姿勢にかかわる項目であり、下降がみられた項目は、インクルーシブ保育の悩みに関する項目であった。以上の結果から、エンパワメントプログラムがインクルーシブ保育に関わる保育者のエンパワメントに一定の効果を上げたと考えることができる。また、ワークショップに参加した保育者に対するインタヴュー調査の分析結果を日本発達心理学会(平成30年3月24日東北大学)において発表した。 平成29年7月からはこれまでの成果をもとに、A乳児院において、新たなエンパワメントプログラムを用いた保育・養育職員研修を9回にわたって実施した。この乳児院は、医療機関が併設していることもあって、重度の心身障害児を含む複数の障害児のインクルーシブ保育を行っている。第1回テーマを「子どもの人権」、第2回テーマを「保育環境」、第3回テーマを「言葉」に設定し1人当たり3回の研修を全職員が受けるというものであった。毎回、テーマに沿った講義、グループワーク、シェアリングのプロセスで、保育の振り返りと、今後の改善に向けた取り組みについて討議を行った。プログラムの開始前と、各回のプログラム終了後に質問紙調査を実施し、研修参加による意識の変化について測定した。また、グループワークで作成したアイデアマップを分析データとして残した。質問紙調査の結果を分析し、効果について、一部乳児院の担当者に報告を行った。
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