最終年次(平成28年度)の実績は以下の通りである。 (1)第2年次に実施したアンケート調査の集計を行うとともに,基礎的な分析を行った。その結果,修士課程と教職大学院とでは,大学院入学前の勉学・生活活動の違いが明らかになった。また,北海道教育大学教職大学院におけるキャンパス間(札幌・旭川・釧路)の学びの違いも明らかになった。 (2)北海道内の現職の小中学校の教職員にヒアリング調査を行った(学部卒,修士課程卒,教職大学院卒)。調査の観点は,第2年次に実施したアンケート調査をふまえ,その結果だけでは不明な部分である(約10名)。学部卒者に関しては,特に卒業後のライフコースが現在の課題との関連性に大きく影響を及ぼしていた。修士卒者に関しては,研究室(指導教員)の影響を大きく受けた学びが現在の教師としての資質・能力に影響を及ぼしていることが示唆された。教職大学院卒に関しては,学部卒であった修了生は,教育課程のみならず,教育課程外の活動(時間講師)と日常の教育課程との間での理論と実践の往還の有効性が示唆された。現職院生であった修了生は,実際にスクールリーダーの立場になってから,教職大学院での学びの有効性が自覚的になったとの示唆を得た。 (3)北海道教育大学教職大学院での学びの集大成ともいえる「MOB(マイオリジナルブック)」の抄録をもとに,所属コース(3種類)と学部卒・現職との6カテゴリ間の学びの違いを分析し,それらの特徴をテキストマイニング分析によって明らかにした。 本研究の目的は,教職大学院の学びの効果を教育課程のみならず教育社会学的な側面からも明らかにすることにある。そのため特に(1)(2)に関してはまだまだ分析の余地は大いに残されている。今後さらに学部卒・修士卒・教職大学院卒間における大学での学びの違いや現在の教師としての能力との関連性を中心に明らかにしていく。
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