本研究の目的は、イギリスにおける新たな科学教育の誕生と変容に注目し、教育知識の変容の過程を社会学的に分析することである。Twenty First Century Science(以下、21CS)コースに準拠した教科書の第1版(2006)と第2版(2011)の内容の変化に注目し、関係者へのインタビュー調査を行った。 21CSは、国家による教科書検定制度がなく、教科書作成の自由度が制度的には高い国だからこそ、誕生した。にもかかわらず第2版は、21CSの当初の目的と理念を「後退」させていった。その背景には、QCAの組織改編、試験の市場、学校・教師・保護者の思惑等、様々な社会的要因が絡んでいる。
|