研究課題/領域番号 |
26381125
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 雅子 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20312209)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大学入試 / グローバル化 / 国際バカロレア / フランスバカロレア / 国際オプションバカロレア / 社会化 / 能力観 / 知識内容 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グローバル人材育成のための「世界標準のカリキュラム」と言われる国際バカロレアと、「フランス人になる」ための通過儀礼と考えられているフランスのバカロレア、そして日本の内容をフランスの方法で試験する国際オプションバカロレアの3種のバカロレア比較を通して、知のグローバル化とローカル化がいかなる形で行われているのかを明らかにする事にある。具体的には3種類のバカロレアの試験内容とその準備教育及びそこで行われる生徒の社会化を比較することにより、教育におけるグローバル化とローカル化を3つのレベル(認知レベル:試験問題の比較分析、制度レベル:試験準備教育の観察調査、社会レベル:生徒の社会化と進路)から実証的に明らかにする。初年度にあたる26年度は、フランスの普通バカロレアの問題集と攻略本の分析と国際バカロレアの教科書とその問題分析および国際オプションバカロレアの試験問題分析を行った。試験問題の分析からは、国際バカロレアでは主として現代的な課題や知識内容に特化しつつ、生徒個人が調査し書くことを通してリサーチ・スキルを身につけcritical thinking能力を身につけることが意図されているのに対して、フランスの普通バカロレアでは、体系付けられた知識を材料として弁証法で大論述問題に答えることにより、フランスの思考表現法を内面化することが意図され、国際オプションバカロレアでは、知識内容と言語は生徒の母国のものを使いながら、実際に試験で測られているのは、弁証法に代表されるフランス式思考法を身につけられているかどうかであることが明らかになった。試験の分析からは、内容よりも「形態」、すなわち、「何が」問われるのかよりも「どう」問われ、「いかに」答えるかにより異なる知の社会化が行われ、それは試験で求められる「書き方」(情報をいかに構造化するか)と深く関わることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年度は、教育のローカル化とグローバル化がいかなる形で行われているのかを3種類のバカロレアの修了試験問題の分析から行う事を計画していたが、試験問題の入手、分析、その結果を学会で発表するまでまとめきることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
認知レベルの調査を終えた今後は、次のレベル、すなわち制度レベルの分析(試験の準備教育の観察調査と教科書分析)を行い、3つのバカロレア準備を通した生徒の社会化のプロセスを比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3つのバカロレアの試験問題入手のために、フランスへの渡航を予定していたが、本やインターネット、現地からの郵送(国際オプションバカロレア分)により渡航なしで入手が可能になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越しになった約25万円については、英語論文作成に関わる英語校閲料に当てたい。
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