研究課題/領域番号 |
26381125
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 雅子 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (20312209)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際バカロレア / 国際オプションバカロレア / 知のグローバル化とローカル化 / フランスのバカロレア / ポスト近代時代の和魂洋才モデル / バイカルチャー人材 / 融合カリキュラム / Theory of Knowledge |
研究実績の概要 |
本研究は、グローバル人材育成のための「世界標準のカリキュラム」と言われる国際バカロレアと、「フランス人になる」ための通過儀礼と考えられているフランスのバカロレア、そして日本の内容をフランスの方法で試験する国際オプションバカロレアの3種のバカロレア比較を通して、知のグローバル化とローカル(ナショナル)化がいかなる形で行われているのかを明らかにしつつ、それらの融合の可能性を探る事を目的に行っている。 この目的に沿い平成27年度は3種のバカロレアの制度上の違い(試験の形態とディプロマ修得のための修了要件を満たすカリキュラムの違い)、試験そのものの問題比較から測ろうとしている能力の違いを明らかにし、ナショナルな枠組みでは教えられる事のなかった知識そのものの相対化を行う、グローバル化の象徴とされる国際バカロレアの「知の理論(Theory of Knowledge: TOK」)」を、いかに日本の教育のローカルな土壌の中で有意義に導入できるかの提案を第1回日本国際バカロレア教育学会にて行った。本提案では融合の形をLocalized IBと名付け、その目的を「グローバル化に対応した日本人の育成」とし、ローカルIBでは社会化で重要な初等教育は従来通り行い前期中等教育からエッセイ形式(日本語)で課題を書かせ、後期中等教育でTOKを日本語で教える。調べ学習は総合的な学習の時間を踏襲しグループで調べて発表するがまとめは個々で日・英語で書かせる。この方法により、多様な知識のメニューを日本語で修得しつつ、ローカルな社会の中で恊働でき、国外の人々とも思考表現スタイル(様式)を共有してコミュニケートできる人材を育てることが可能になる。このモデルは、ポスト近代時代の和魂洋才モデルとして他国への適用も可能であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランスにおけるテロの影響で、当初予定していた学校調査がかなわなかったが、収集できた資料および国内のIB校の観察調査により、当初の研究目的である3つの異なるバカロレアの比較およびその比較からいかなるグローバルとローカルの融合の形が可能かの提案までをまとめ、学会発表を行うことが出来たため、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
学会発表のレベルだったローカルとグローバルの知の融合であるローカルIB (Localized IB) の提案を、より精緻化して今後は論文の形でまとめる。その際に必要となる資料の収集と先行研究の文献の読み込みを中心に調査を行いたい。予定していたフランスの調査に関しては2017年4月現在も戒厳令が解けず交渉が困難なため、国内のIBの調査に切り替えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
テロの影響でフランスに戒厳令が引かれてリヨン市での学校調査を行う事が困難になったためその旅費及び滞在費が未使用となったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
国内のIB校の学校調査に切り替えて実施するとともに、調査結果をまとめた論文作成のための資料収集と図書購入に未使用分を充てたい。
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