本研究は、グローバル人材を育てるための「世界標準のカリキュラム」と言われる国際バカロレア(IB)と、「フランス市民」になるための通過儀礼として受け止められているフランスのバカロレア、そしてフランスのバカロレアのオプションとして文学と歴史・地理を母国の内容と母国語で受けられる、フランスと母国語のバイリンガル・バイカルチャー人材を育てるための国際オプションバカロレアの3つバカロレアの比較を通して、知のグローバル化とローカル(ナショナル)化がいかなる形で行われているのかを明らかにしつつ、日本への導入が試みられている国際バカロレアを一つの雛形として、日本型IBの可能性を理論と実践の両面から明らかにし、具体的なカリキュラムの提案を行うことを目的としている。 本研究の最終年度に当たる29年度は、この目的のもと、①日本型IBの理論とカリキュラムレベルの提案及び、②IBのコアである「知の理論(Theory of Knowledge: TOK)の日本の大学への導入の提案を国際バカロレアシンポジウム及び大学教育研究フォーラムの発表を通して行った。①では、3つのバカロレアの目的・内容・言語・教授法の特徴をまとめた上で、目標とその手段としての知識の在り方を4分割表を使ってモデル化した。日本の既存のカリキュラムがモデルの中でどこに位置付くのか、その特徴を踏まえて初等から後期中等教育までの流れを示し、どの言語でコアになるカリキュラムを実施したら良いのかの理論構築を行なった。②では、「知の理論」がローカルなレベルでもグローバルなレベルでも自らの知の特徴を認識しつつ、戦略的な知を考える上で重要なものとなることを明らかにし、教養基礎科目として位置づける具体案をモデルとともに提案した。その際に3つのバカロレアにおける「論文の書き方」の違いが、各プログラムの特徴を表したものとして、大学で教える提案を行った。
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