2016年に、国内4都市の中学校18校で中学2年生(1348名)に対して平和意識調査を実施した。1997年、2006年、2016年の3つの調査を比較し、過去20年間における中学生の平和意識の変化を分析した。日本国憲法の下で、過去20年で調査に回答した生徒は一貫して平和主義的であり、大きな変化はない。だが、調査結果では、正義の戦争論反対と戦争放棄の考えが弱くなる予兆があることが示されている。つまり、正義の戦争論に対して中学生の反対がわずかに減少し、戦争放棄への確信がわずかに低下していることが示された。平和主義的態度の低下の予兆は、エイジェントの変化とそれが伝える内容に影響を受けているといえよう。 平和教育のホームページを2つ開設した。一つは平和教育学事典であり、平和教育学は平和教育実践を理論面から支援するために学問的知見を体系化することを目的とする。平和教育実践が発展する研究的基盤の一つとして、21の項目を有する「平和教育事典」を編集し、ウェブ版のHPとして公開した。他方、平和教育実践の手引きとして、平和教育を実践する理由、発達段階に応じた学習目標、授業づくりの方法、Q&A、等を内容とする「平和教育の授業づくり」のHPを公開した。 平和教育の国際比較では、アメリカのカリフォルニアでグローバル化に対応した、平和教育の在り方について実地調査した。ユダヤ人差別や日系人排斥運動は平和教育の重要な題材である。イスラエルの平和教育では、アラブとイスラエルの共存のための教育が必要とされている。コスタリカで開かれたシンポジウムに参加し、Development of Peace Education in Japanese Schoolsを報告した。 平和教育研究者と実践者との交流を深めるため、平和教育授業研究会(PEG)や平和教育学フォーラムを開催し、平和教育実践研究への参加の輪を広げた。
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