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2015 年度 実施状況報告書

若者自立支援活動の場に滞留する若者が抱える問題の解明とその対応へ向けた総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26381140
研究機関作新学院大学

研究代表者

山尾 貴則  作新学院大学, 人間文化学部, 教授 (80343028)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワード若者自立支援 / 承認 / ホネット / セン / 潜在能力アプローチ
研究実績の概要

本年度の成果は以下のとおりである。
第1に、「若者ミーティング」に継続的に参加しているメンバーのA氏に対して聞き取りを行った。聞き取りの内容は、A氏の来歴、A氏自身が自分の課題だと考えていること、若者ミーティングに対する評価、今後の人生についてのA氏の展望などである。A氏の語りからは、”自分がこれまで本当にしたいことを選択してきたわけではない”ことに対するある種の悔恨がうかがえる。その思いは若者ミーティングに対する評価にも反映している(”他には行くところがないから来ている”という語り)。さらに今後の見通しもはっきりはしていないまま、若者ミーティングに留まっている。ただし、若者ミーティングの場に留まっていることを問題視することには一定の留保が必要である。この点については以下の第2の点とも関わる。
第2に、若者自立支援活動が有する意味や意義を適切に評価するための基礎視角として、A.センの潜在能力アプローチを検討した。センは人間の福祉を「生活の良さ」とシンプルに定義し、それが実現するために達成できていなければならない事柄が存在するとして、それらを「機能」と呼んでいる。さらに「機能のベクトルの集合」を「潜在能力」と呼び、この潜在能力が個人において獲得されることが重要であると述べている。その上で、センはどのような機能や潜在能力が必要であるのかは、福祉の現場においてその都度探り当てられねばならないと述べる。研究代表者の見るところ、センのこの指摘は若者自立支援活動の現場においても当てはまる。若者自立支援活動の「評価」は、しばしば利用者の就労実績によってのみ計測されるが、そこでは、利用者が良き生活を送り得ているのかどうかという点が等閑視される。この問題を解決するため、今後は、利用者がどのような状態にあるのかを探り、それらとの関連で支援の成果を評価するというアプローチが必要になると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

若者自立支援活動の成果を評価するための指標ないし視点を作り上げていくための理論的考察については、A.センの議論を検討することを通して研究をすすめることができた。
また、数年来継続的に参加している「全国若者・ひきこもり協同実践交流会」(昨年度は福島県福島市において開催)や日本生活指導学会大会(昨年度は岡山大学において開催)などに参加し、新たな知見を得ることもできた。さらに鹿児島県鹿児島市において精神障害を有する人たちの支援を行う「ラグーナ出版」の取り組みを調査・見学し、代表者の方、利用者の方々と意見交換をするという貴重な機会を得ることもでき、これらの活動から、研究代表者が取り組む若者自立支援活動の課題を考える手がかりを得ることができた。
他方、若者自立支援活動の現場に集う若者たちについての聞き取りについては、A氏に実施できたのみである。

今後の研究の推進方策

今後は若者ミーティングに集うメンバーへの聞き取り調査を増やし、データを蓄積する。
センの議論についてはさらに検討を深め、若者自立支援活動の評価をしていくための指標づくりに役立てていく。

次年度使用額が生じた理由

海外における若者自立支援活動の調査を予定していたが、実施できなかった。

次年度使用額の使用計画

海外における若者自立支援活動の調査、具体的には韓国における若者自立支援活動の調査のために使用する計画をたてることとする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] 若者自立支援活動における「承認」の位置―A.ホネットの承認論とA.センの潜在能力アプローチを手がかりに―2016

    • 著者名/発表者名
      山尾貴則
    • 雑誌名

      作大論集

      巻: 6 ページ: 381-402

    • 謝辞記載あり

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公開日: 2017-01-06  

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