研究課題/領域番号 |
26381140
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研究機関 | 作新学院大学 |
研究代表者 |
山尾 貴則 作新学院大学, 人間文化学部, 教授 (80343028)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 若者自立支援 / 承認 / 潜在能力アプローチ |
研究実績の概要 |
本研究の最大の特質は、若者(15-39歳)の社会的自立を支援する活動の一環として、“他者とのコミュニケーションに不安をかかえる若者たちがコミュニケーションを気軽に経験したり、他者とともに同じ空間にいることができるための場”である「若者ミーティング」を実践し、そこに集う若者たちの様子に学びながら、若者たちが抱える種々の困難の心理的、社会的構造を明らかにするところにある。本年度における研究・実践は、1.若者自立支援活動「若者ミーティング」の実施、2.「第13回全国若者・ひきこもり協同実践交流会inとやま」への参加、3.「第35回日本生活指導学会大会」への参加、4.自立支援活動の意義を理論的に基礎付けるための作業の継続、である。特記事項は以下の通りである。 まず、2008年度より継続している「若者ミーティング」活動においては、他者とのコミュニケーションに苦手意識を持つだけでなく「その場で何をしていいか分からない」状態であった若者たちが各自ミーティングの場での「役割」を見出し、主体的に活動を始めるという変化が昨年度よりもさらに多くの参加者に生じていることを確認することができた。今後はこの「居場所における役割の発見と主体性の(再)構築」のあり方について分析を深めていく。 次に、全国の若者自立支援活動実践者たちが集い各自の実践と知識を共有する場である「第13回全国若者・ひきこもり協同実践交流会inとやま」に参加した。研究代表者は「論ずるより作って感じる居場所」と名付けられた分科会において、上述した「居場所の中で役割を発見する」ということの重要性を発表したところ、参加者から「役割交換の効果」という観点があることをご教授いただいた。この方は研究代表者と同じく若者の居場所を運営しており居場所に関する考え方も共通するところが多い。今後はこの方との意見交換、居場所の見学等を進め、知識を共有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した社会的ひきこもりの若者たちを支援する実践者たちとの交流は、研究代表者自身が実践する若者自立支援活動の特質や意義を考察するための比較・参照軸として有効に機能している。 また、生活指導学会大会への参加は2008年から継続しているが、この学会には社会教育、教育社会学、臨床心理学、社会福祉学、倫理学など多様な分野の研究者が所属しており、他分野における若者の社会的自立に関する諸議論と知的成果を文献からだけではなく他分野の研究者との議論を行うことを通して得る格好の機会となっている。今後も引き続き参加して新たな知見を吸収し、より幅広い視点から若者の社会的自立に関する考察ができるよう努める。 さらに、4.の自立支援活動の意義を理論的に基礎付けるための作業であるが、若者ミーティングの意義を「就労したかどうか」という一点“のみ”で評価するのではなく多面的に評価するための理論枠組みを構築するべく、主としてA.センの「潜在能力アプローチ」に関する諸議論を手がかりにして検討を続けている。それに加え、上述した「参加者たち自身がミーティングの場における「役割」を発見し主体性を(再)構築しつつあること」を「役割交換の効果」という視点から考察するというあらたな研究視角を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究の最終年度にあたる。よって、上述の進捗状況を更に先に進めると同時に、本研究の総まとめを行うことに注力する。その際、2008年より継続してきた若者自立支援活動の場に参加した当事者の皆さんに聞き取りを行い、当事者の皆さん自身によるこの10年の振り返りを記録し、活動に関するアーカイブを作ることを目標とする。
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